多分きっと夢なのだろう。
暗闇の中で石造りの城が私の目の前にそびえ建っていて、私は誰かに呼ばれているような気がして、入口を探していたのだ。



「お方様…!!」



いきなり背後から叫ばれて、私はぎょっとした。
立っていた男は銀の髪に月光を反射させて、鋭い目線で私をギラリギラリと睨んでいた。
肉食獣のような目から私は目を反らして、石造りの城を見上げた。
怖い。でもまあ所詮は夢である。



「中に入りたいんですけど…。」

「中ですか?それならこちらから…。」



どうやら彼は私を案内してくれるらしい。着いて来いと言うように、私の前に立ち私を気遣いながら、前に進む。
私もそれに従って進んだ。まさか、こんなすんなり行くとは。
少し進むと長い階段が現れた。城に向かって真っ直ぐ伸びるその階段の先に誰かが立っているのが見えた。暗くて顔は見えないが、何だろう嫌な予感がする。



「何を騒いでいるんだい?」



その人影に近付けば、聞き慣れた声が響いた。
やっぱりその人は柔らかい髪をふわりふわりとそよがせて、微笑みを浮かべていた。

そして、気付いた。
似てるというかほぼ同一人物なんだけど、この人は竹中さんじゃない。つーか何その妙な格好。



「半兵衛様…!お騒がせして申し訳ございません。お方様を部屋までご案内するところでございました。」



お方様って私か。誰かと間違われてるのか、私。
竹中さんモドキは私をじっと見て、ふむと声をあげた。何だろう良くないことが起こるような気しかしない。



「君は誰だい?」



竹中さんモドキが私に聞いた。
誰とはどういう意味なんだろうか。



「半兵衛様、何を…?」

「彼女はつい先刻、閨にいたし、もう眠っていた。彼女は一度眠れば、起こすまで起きなことは三成くんも知っているだろう。」



まるで私みたいな奴だなぁと思いながら、竹中さんモドキの話を聞いていた。
しかし、竹中さんモドキと目が合ってぎくりとする。こりゃあ、機嫌超悪いじゃねぇか。竹中さん。



「だから、君は彼女じゃない。なら、誰だ?影武者なんかはいないはずだ。」

「影武者って…その人は命狙われるような人なんですか?」

「半兵衛様の質問に答えろ!!」



さっきまで親切だった彼がいきなり私を睨みつけて噛み付かん勢いで叫んだものだから私はびくりとした。
豹変ってこんな感じか。怖い。



「私はただのウエイトレスです。」



他に思いつかなかったから、自分の職種を言ってみたが、二人の眉間にしわが寄ったのを見て、私は焦った。
一般的な解答だと思ったんだけどなぁ。やっぱり飲食店経理とか言った方がよかったかな。




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お方様って普通は大将の奥さんなんで厳密に言うと三成の大将は秀吉なんでお方様ではないんですけどね。
拍手で名前変換できないので、そこは暖かい目でお願いします。0508
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