時の流れは早い。
あれから一週間が経った。

仕事を辞めると聞かないお兄ちゃんをどうにか説得…もうほとんど泣いて頼んだだけだけど、私は高校近くのマンションで一人暮らしをすることになった。
しかし、長期休暇にはお兄ちゃんのマンションで過ごすことと、高校を卒業したらお兄ちゃんのマンションに引っ越すことが条件だった。

他にも山のような規約はあるものの、これからは私一人で生活していかなくてはならない。
お金の心配はいらないとお兄ちゃんには言われたが、そんなに甘えてもいられない。
私もしっかりしなくては。





「何かあったらすぐに電話しろよ?」


「うん。」


「無理はするな。」


「うん。」


「いいか、我慢しなくても、いつでも呼べば」


「お兄ちゃん、早くしないと乗り遅れるよ。」




早朝、始発で会社に向かうお兄ちゃんをマンションの下まで見送ってから、私はため息をついた。
今日から学校に行こうと思っている。
心配してくれた友達たちにも顔を見せないと。





「ねぇ、」





後ろから高いような低いような男の人の声がして私は振り返った。
立っていた男の人の人は恐ろしく綺麗な人で私は飛び上がった。
その人の白銀のウェーブがかかった髪が日の光を反射させてキラキラと光る。
私は少し目を細めた。





「おはよう。」


「お、はようございます…。」


「君、氏さんだろう?」





その人は尋ねている口調なのに、声には自信が満ちていた。
私は肯定を示すために小さく頷いた。





「ああ、やっぱり。
早人の妹の名前は確か、名ちゃん…だっけ?」





早人は私のお兄ちゃんの名前だ。
私が再び頷くと、にこりと眼鏡の奥の瞳が笑った。





「お兄ちゃんの、友達ですか…?」


「まあ、そうだね。」


「へ、へぇ…!初めまして。」


「僕もこのマンションに住んでるから何かあったら502号室においで。」





いきなりそんなことを言われてもどうしていいのか分からない。
じゃあ、と立ち去りかけたその人は私を振り返った。





「お兄ちゃんには僕のこと内緒にしておいて。」





悪戯っ子みたいな微笑みを残して、その人はマンションに消えて行った。





つづく
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