ぐちょり、と刀を抜いた音が嫌いだった。
「気持ち悪い。」
「よくやったじゃないか、また腕を上げたかい?」
薄ら笑いを浮かべた軍師が私の後ろでそう言ったのが聞こえた。
いつでも私は泣き出したかったのに、この軍師はそれを許してはくれなかった。
酷い、嫌な人間だ。でも私は彼が嫌いじゃなかった。
「褒めるのは、止めて下さい。」
「そうかい?」
「…幾千も幾万も犠牲を出して磨いたこの腕を褒められたところで喜べやしません。」
刀を握る手に力が入った。
私は間違っていないだなんて、胸を張って言えるはずがない。
「…その思いはやがて迷いを生む。死ぬのは君だよ。」
「まだ死にたくない。」
「なら、君は僕の言うことだけを聞けば良い。」
にこりと軍師は笑うのだ。
どうして私と同じ戦人であるのに、彼はこうも美しいのだろうか。
「貴方が死ぬ時が来たら、私に教えてください。」
彼の美しい顔が少し歪む。
「貴方がどんな風に美しく散るのか見てみたいのです。」
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脱・レストランタケナカ計画は無残に散りました。戦国はんべを書こうとするとヒロインがやたら病みます0619