春の陽気が心地良い。
縁側に座る名は目を閉じた。そよそよと頬を撫でる風は実に気持ちが良いものだ。





「いい加減起きぬか!!!」





肩を揺すられ、怒鳴られて目を開けると久方ぶりに見る夫の姿に名は驚いた。

政の事情で城を開けることになったと元就が言ったのはつい三日前である。
名がいつ帰るのかと聞けば長くはないと答えられた。
なかなか曖昧な返事に名は少しばかり不満を覚え、家臣に尋ねたところ少なくとも六日はかかると言われた。

しかし、彼はそこにいる。





「も、となりさま………?」


「我以外に誰がおる。
貴様は相変わらず寝起きが悪いな。」


「申し訳ありませぬ、春の陽気が心地良かったので、つい。」


「だからと言ってこのような場所で寝る馬鹿は貴様ぐらいのものよ。」





何だか言葉の端々に棘を感じる、と名は寝ぼけた頭で考えた。
けしていつも元就が優しい物言いをしている訳では無いが、今日は何故か機嫌が悪い。





「元就様、どうかなさいましたか。」


「何がだ。」

「思い当たることが無ければ良いのです。
………名は眠うございます。」





欠伸を噛み殺しながら、名は元就に告げた。
元就が黙ったまま隣に座った。
何となく、甘えても良い気がした名は肩に寄り掛かってみる。
払われることが無かった頭をそのままに、名は再び眠りについたのだった。





「…という夢を見ましたの。」


「……………だからどうした。」


「だから?別にどうも致しませんわ。
ただその夢を見たのが元就様が出て二月たった日のことだったというだけです。」


「……何が言いたい。」


「三月も帰られ無ければ出発前におっしゃって下さい!!!!」





三ヶ月ぶりに見た夫の姿に安堵よりも怒りが勝った名はそれを一気にまくしたてた。





「文のひとつでもくだされば良かったのに…!!
名がどんなに心配したと思っているんですか!」


「……ちゃんと帰って来ただろう。」


「ちょっと、殴りますよ元就様。
名が夢にまで元就様を見たって言うのに!」





わんわんと泣き出した名に元就は呆れることしか出来なかった。





「面倒臭い女ぞ。」


「直球で言いますね。言っておきますけど、わざとですよ!寂しくなんかなかったんですからね!
何かよく分からないですけど、長曾我部殿とか普通に遊びに来てくれたりしましたからね………って、嘘です長曾我部殿なんか来てませんよ!釣った魚を美味しく頂いたりしてませんからね!」


「おい、明日長曾我部に奇襲をかける準備をせよ。」


「元就様あああああ!!!!」





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本当めんどくさい奴だなあ。笑
まぁ結局は仲良しナンダヨーって言うのを書きたかったんですが、もうだめだこりゃ0304
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