子供らしくない小さな微笑みを浮かべて帰蝶さまにと花をくれた。
どうしたのかと聞けば、わざわざ山に行って来たらしい。
危ないから一人で外に行くなと何度言っても私は貴女の忍です、お気になさらないで下さいと言ってこの子は聞かない。
「おや、帰蝶…そちらは?」
「光秀、」
どうやら父上に会いにきていたらしい、光秀が私の連れているこの子を見て首を傾げた。
私の後ろに隠れてしまって、この子は動かない。
人見知りなのは分かっていたし、自分が忍だという信念から顔を曝したがらない。
「少し訳があって預かってる子よ。
名、そのままで良いから挨拶なさい。」
名は私の腰に顔を埋めて、小さく頷いた。
「初めまして、私は明智光秀です。」
「……はじめまして、名と申します。光秀さま。」
名の名を聞いた光秀が、あぁと呟いた。
いけない、この男はそういう人間だった。
「噂は聞いていますよ、たくさん殺したんでしょう?
クク、良いですねぇ。」
「光秀!!」
人の気持ちを考えたことが無いのか、この男は。
名が私の着物を握る手の力を強めた。
「事実でしょう。それを隠してどうするんですか。」
「黙りなさい。行くわよ、名。」
「はい…、帰蝶さま。」
かわいそうなこの子をさらに追いやって何が楽しいと言うの。
私の後を追い掛けてくる可愛いこの子を泣かせてなるものか。
「楽しい拾い物をしましたね、帰蝶…。」
私は絶対にこの子を幸せにしてみせる。
全ては貴女様から教わったことにございます。
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幸福論者の過去話として書いてたんですが、ヒロインの性格が違い過ぎて止めました。
ていうかこの設定色々時間軸的に無理があることに気付きました。
また違う形で帰蝶と明智と忍ヒロインの過去話は上げたいと思います。0210