軍議が終わり、廊下で見付けた大きな背に声をかけた。






「秀吉様。」


「何だ?何か今回の策に不安でも。」





私は首を振る。





「いいえ、そんなこと言っては半兵衛様に切り刻まれます。」


「半兵衛も流石にそこまではしないだろう。」





まぁ、秀吉様にはそう映るかもしれないが、あの男ならやりかねない。
そうじゃなくて、





「人は人を忘れるときに声から忘れていくそうです。」





秀吉様は表情を変えずに私を見下ろした。
私は目を伏せながら言葉を続ける。





「私……それを聞いて、ひとつ気付きました。」


「……何を?」


「…ねね様のお声がどうしたって思い出せぬのです。」





それは衝撃的だった。
仕えていた御方様を忘れるだなんて、絶対に無いと私は思っていたからだ。
もしまたあのお声を聞けるのなら、絶対思い出せるのに……それは叶わないことだ。





「ねね様は秀吉様の力になれとおっしゃいました。」


「…………。」


「私はねね様に忠義を誓った身……、ねね様が私の元を去ろうとも私はねね様に従います。」





私は片膝をついた。





「私はねね様を裏切りは致しませぬ。」





そして、頭を下げた。

私が仕えているのはねね様だけなのだと、秀吉様に分かって頂くために。





「我の障害になる以外なら我はお前のやることに口は出さん。」





秀吉様はそれだけ言って歩き出してしまった。



ああ、ねね様ねね様。
殿が天下をお取りになれば、救われますか。
死ぬなとねね様がおっしゃったから私は死にません。
たとえ忍の屑だと言われようとも私は醜く生き残って参ります。


ああ、ねね様。
殿が全てを手に入れたその時は、また私に声をかけてくださいますか。




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私が書くヒロインはどうしてこう女の子が大好きなんだろう。0202
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