私は疲れた体をぐっと伸ばす。
どうにも最近無駄に走ってばっかりである。原因は明らかだ。

「この辺りで名前という飛脚を見かけませんでしたかな。」

団子屋のおじさんに私の行方を聞く可哀相な今川軍の人から逃げ回っているからだ。
どうやら義元様は意地でも私を陥れたいらしい。切実に早く誰かいい人を私以外に見付けて欲しい。
私は仕事と恋仲なんです。
とりあえず、体勢を低くしたまま団子屋の裏を通り抜けることにした。

「名前?名前だ!おーい!元気か、名前ー!」

さ い あ く だ 。

「今、名前と言ったな、おぬし。」

「お?お前は誰だ?」

「それがし、今川義元様に仕えし兵。義元様の名により名前殿を探している。」

「そうか、某は加賀を治める前田利家だ。名前!この人お前を探してるらしいぞ。」

あの馬鹿誰か黙らせてくんねぇかな!?
私は立ち上がって利家様を睨むが、利家様はそんなものどこ吹く風で久しぶりだななんて愉快そうに笑っていらっしゃる。
私は何も楽しくない。

「利家様、私訳あって、その者に追われているんです。だから、行く訳にはまいりません!!!!」

荷物を抱えて、走り出したら案の定、今川軍兵が私を追い掛けてきた。

「ぐわっ!」

と思ったらよく分からん叫び声を出してその場に倒れた。
後ろにはカジキマグロ背負った利家様。
いやいやいや、この人私を追って来た真面目な人なだけできっと多分悪い人ではないと思うんですけど。

「利家様、何してんですか!?」

「何。女子の嫌なことをするのは良くないからな。名前は嫌なんだろう?」

「は、はぁ…、まあ、そうですね。嫌でした。この人大丈夫なんですか?」

「少し気を失ってるだけだ。まつの飯を食えばきっと全回復するぞ。じゃあ、行くか!」

にかりと笑った利家様は義元様の可哀相な兵を右肩に背負い、左肩にカジキマグロをぶら下げて、城へ悠々と進んでいくのだった。お、男前ですね、利家様。





豪 放 磊 落

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