私が必死に歩いてやっとたどり着いた氏政様自慢なんたら門。
なんか立派な名前だったんだけど、忘れちゃったや。

「門までが遠いんだよ、この城…!!」

私が悪態を着いたら、なんちゃら門がゆっくり開いた。
閉めるのも開けるのも時間のかかる門だな、まったく。
北条軍の人に氏政様の元まで案内してもらう。

「こちらです。」

「ありがとうござます。」

とりあえず頭を下げて、氏政様の声を待つ。

「お久しぶりです、氏政様。」

「うむ!面を上げい!」

「文にございます。」

懐から文を取り出して、氏政様に渡す。
氏政様が大きく頷いた。

「お返事はどうされますか。」

「また近くに来たら寄れば良いじゃろ。」

「そうですか。じゃあ、私はこれにて、」

「待て待て!そんな適当にワシを扱うな!!」

来たよこれ。
いっつもめんどくさいんだよなぁ、氏政様の話長いし、長いし、くどいし、長いから!

「はぁ、あのですね私、急ぐんですよ。」

「あれはつい一年ほど前の話じゃ…、」

そして、話を聞かない。
このジジイいいい!!!!!あ、いやお客ですからね、そんなこと言いませんよ。
ほら、お付きの小太郎様もなんか私の方見て……。

「小太郎様、いつからいらっしゃったんですか。」

「……………。」

聞いた訳じゃないよ!聞いた訳じゃない、私の独り言だよ!
私、忍者苦手なんだよ畜生!かすが様以外な!

「これ!聞いておるのか!」

「え、はいはい、聞いてますよ。」

「ええい、年寄りは大切にせんか!」

「してますよー。それで、その時は饅頭がどうなったんですか?」

「そんな話をとらんわ!!!」

怒られちゃったよと小太郎様を見たら、微かに微かに肩をすくめた気がする。
見間違いかもしれないけど。

「そうでしたっけ?」

「まったく、最近の若い者は…、」

「氏政様、やっぱりそろそろ失礼します。」

「名前!お主、話を聞く気は」

「無いです。」

氏政様ががっくり肩を落としたのを見届けて、私は一礼してから立ち上がった。

「次はゆっくりお団子食べながら話ましょう。」

「そうじゃな!お前がそこまで言うなら仕方ない。団子を用意して待っててやろう。」

どうやらご満悦な氏政様はにっこにこで見送ってくれました。
良かった。良かった。





老 成 剛 毅

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