勢いよく飛び出したものの、特に急ぐ用事もなくゆっくり歩く。
俯いてとぼとぼ歩くのは私の悪い癖だった。
幸が薄そうで陰気に見えるからやめなさいと昔からよくお母さんに言われた。
小学生の時もそうだった。俯いて、ランドセルのベルトを握りしめて黙々と歩く私の後ろ姿は見てられないとよく言われた。
そうだ、小学生の時だ。
私の中でずっともやもやとしていた何かが、少し晴れたような気がした。

「名前、何だっけ…。」

昔、とても目付きの悪い男の子がいた。
その子はとても物静かでいつも本ばかり読んでいた。今考えればその子は虐められていたんだろう。
よく上履きを無くして、来賓用のスリッパを履いていたし、真面目で勉強熱心なのに教科書が無かったり、ボロボロだったりした。
別に仲が良かった訳ではないが、私とその子は隣の席だったから、それが嫌でも目についた。
教科書を貸してあげたり、消しゴムをあげたりもした。

そのせいかどうかは知らないが、私の靴が無くなったときがあった。
放課後になっても見付からなくて、私は泣きながら学校中を探し回っていた。
そこへ何故かボロボロになったその子が私の靴を持って現れたのだ。
相変わらず目付きは悪いまま、私に無言で靴を渡すと、ふらふらしながらランドセルを背負ってその子は帰って行った。
その時は靴が見付かったことが嬉しくて何も気付かなかったが、今思えばきっとあの子は…

「おい、」

私がぼんやり遠い思い出に馳せていたら、腕を捕まれて現実に引き戻された。
振り返ればそこにいたのは『毛利』さんだった。
私は混乱する。

「忘れ物だ、うつけ。」

差し出されたコンビニの袋を見て、自分が肉まんしか今持っていないことに気が付いた。
私はおどおどしながら袋を受け取り、頭を下げた。
顔を上げたときに『毛利』さんと目が合って、驚いた。

「…………。」

「…………。」

似てる、だけなのだろうか。

「…小学校、何処ですか……?」

私が思わず口に出した言葉に『毛利』さんは顔を歪ませた。
そして、私に言ったのだ。
「貴様と同じだ。」





 
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