「肉まんひとつ…。」
「はーい、ありがとうございます!袋お分けしてよろしいでしょうか?」
「お願いします。」
そうだよ。これが普通のコンビニだよ。『猿飛』さん完璧!
私は大満足でアイスと肉まんを受け取った。
二度と来るかとは思ったものの、このコンビニが立地的に私に最も好都合なのだ。あと肉まんが美味しい。
しかし、勿論『毛利』さんがレジにいない日にしか入らない。
とは言っても、最近まったく『毛利』さんを見かけなかった。とうとうクビになったのか。
「ありがとうございました。またお越しくださいね。」
接客態度満点の『猿飛』さんがにこりと笑顔でそう言った。
おお!何このイケメン!
しかし、何故か私が気になったのは『毛利』さんのことである。
「あのー…確か此処で毛利さんって人、働いてましたよね?」
私が尋ねると『猿飛』さんは一瞬驚いてから「毛利の旦那の知り合い?」と聞いてきた。
私は違いますと首を振る。
「あれ?そうなんだ。意外。」
「い、意外ですか…?」
「だって、君、毛利の旦那のシフト通りに此処来てたからさ。てっきり彼女か何かかと…って失礼しました。今のは聞き流して下さいね〜。」
『猿飛』さんは店員さん口調に戻って、私に微笑みかけた。
「でも、知り合いじゃないのにどうして毛利の旦那のこと?」
そう尋ねられて、私ははっとする。
今、とても恥ずかしいことをしてるんじゃないか私!!
これじゃあまるで、
「毛利の旦那好きだったとか?」
「それはないですけどね…!」
『猿飛』さんの結論に至るのは仕方がないことだ。
恥ずかしい…!!
「あの、いや、無愛想だったから、クビになったのかと思って…。」
『猿飛』さんは、辞めたけどクビじゃないよと笑った。
「え、クビじゃないんですか。」
「うん、此処のバイトも就職活動の一貫らしくてね。」
「就活ですか?」
「うん、あの人エリートコースだからさ、現場も知っとけってことらしいよ。」
お偉いさんは大変だね〜と軽く笑う『猿飛』さん。
コンビニの入店音が響いて、ぼんやりしていた私は、またはっとして『猿飛』さんに頭を下げた。
「お仕事中にすみませんでした…!」
私は袋を片手にコンビニを飛び出した。
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