元就様は太陽を日輪と呼び、拝んで、崇める。
それに習ったのか、最近はじいちゃんや父さんまで一緒に太陽を拝む体操をしている。
そのことに元就様は不満どころか喜びさえ感じているようだ。
何でも奥さんやお姉さんは付き合ってくれないらしい。元就様かわいそうに、かっこ笑い。

「元就様、別に太陽拝むのはよろしいんですけどね、何で私の部屋なんですか。」

毎朝、日の出と共にじいちゃん父さん元就様が一緒に私の部屋にやってきて、日輪よーと言うのだ。
何だこいつら。マジふざけてんな。

「貴様の部屋が一番日輪がよく見えるのだ。」

「ベランダに行って下さい。」

「あちらは南向きだろう。」

確かに、ベランダは南向きだ。
日はよく当たるものの真正面から日の出は上がらない。
それに引き換え、私の部屋の窓は東向きである。

「私、寝不足ですよ…。」

「早くに寝ないからだ、うつけ。」

「私だってやることたくさんあるんですよ…!」

「…貴様の父親は遊んでいると言うておったぞ。」

「親父ぃいい!!!!!!」

私の怒りの矛先が父さんに向かったが、父さんは父さんでお前の部屋は日当たりが良いなぁとのらりくらりと私の文句を流した。
もうやだ。何この家族。

「貴様は落ち着きがないな。」

「……大きなお世話です。」

呆れたように言う元就様は母さんがいれた熱いお茶を啜っている。
というか、みんなナチュラルに受け入れすぎだと思う…。
ご先祖様が我が家に来たぞわーい!ってなる家なかなか無いと思うよ!

「それはそうと元就様、帰れそうなんですか?」

「さあな…。」

「帰りたいですか?」

「…当たり前のことを聞くな、うつけ。」

やっぱり元就様も心細くはなっているらしい。
ていうか、この人絶対、娘心配なだけだよ。

「帰れますよ!元就様がずっと此処にいたら、私たち消えちゃうし!」

私が気休め程度に思い付きでそう言ったら、元就様は少し驚いたような顔をした。
そして、何か言おうと口を開きかけた元就様が戸棚に吸い込まれた。

「えぇぇええ!!!!?も、元就様!!!??」

私の叫び声を聞き付けたじいちゃんや父さんが駆け付ける頃にはもう元就様は戸棚に収まり、戸が勢いよく閉じた。
家族全員で恐る恐る戸棚を開くが、そこにはいつもと同じように掃除機が居座っているだけだった。

「掃除機に吸われたとかじゃないよね…?」

そう私が言ったら、そんな馬鹿なとじいちゃんが言った。
いやいや、そもそも元就様がいた時点でそんな馬鹿なだし。
戸棚に人間吸い込まれるのもそんな馬鹿なだよ!じいちゃん!!

こうして、呆気なく毛利家騒動は幕を閉じた。





毛利家騒動閉幕!

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