お礼と小ネタ
2020/05/03 00:37

ご無沙汰しております。皆様は如何お過ごしでしょうか。自粛できない濁流のような日々を溺れている中、今年もこの時期がやって来ました。

小話を載せるその前に、Boothにて頒布しておりました文庫本版「シナリオの守り人」が無事に完売となりました。ありがとうございます。最後の1セットの発送通知がBooth倉庫から届いていたので、そろそろお手元に届く頃ではないかと思います。感慨深い。もし機会があるならば、作品があるならば、是非皆様にも本を作っていただきたい。そうオススメしたくなる経験でした。


※5月2日の小話はハッピーなIFではありません。



↓↓↓



「――きろ、おい――――起きろ!」
「っ、…………セブルス?」
眉を寄せる彼の表情はいつになく不安げで。大きく息をはきながら私の肩を掴んでいた手を離す。その手を頬へ移してくれる前に、私は彼を腕へと閉じ込めた。慎重に、力強く、溢れ落ちてしまわぬように。くしゃりと指に絡む黒髪にたまらなくなって、知らず知らず思いが増した。
「私の髪を根絶やしにする気ではあるまいな?」
「悪夢だった」
「……そうか」
「馬鹿な夢。もしもの未来を――」
「夢は夢だ」
震える指に重なるかさついた手が、私を落ち着かせてくれる。彼の呆れたような、それでいて温かい目は、何よりも深い呼吸へと私を誘った。
「その豊かな想像力を今度は別のものに役立てたまえ」
「別のものって?」
「起きてから考えればいい――」



「っ、…………馬鹿な夢」
伸ばした先の、冷えきったままのシーツ。くしゃりと知らず知らず力が入る。重なるあの手を想像しても、役に立たない、夢は夢。

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