暖かい手 2


「んー……美味いんだが…何か足んねぇんだよなぁ…」

そう、僕もそう思った。何か足りないって。だけど何だか判らなくて意見が欲しかったんだ。やっぱり料理する人には判るんだな…。でもスッキリと出てこないようで蒼君は頭を捻ってる。

「んーーー…あ、酸味。酸味が足んねぇんだよ!もちっとあるとさっぱり喰えると思うんだが」
「…酸味……あ…そうだ…」
「言われてみれば。少々足りない気もしますね」
「でさ、色味が弱ぇからプチトマト1個でも置きゃ完璧じゃね?まぁ予算とかもあるだろうけどよ」

酸味を加えてプチトマトを飾った状態を想像する。凄い!僕が想像してた以上の物になった。

「凄い…いい…蒼君、ありがと」
「おうよ、役に立てて良かったぜ♪」

お礼を言うとキョトンとした後、ニィと笑い僕の頭をクシャリと撫でた。その感触は颯さんとは違う…でも優しさを感じる大きな手だった。


その後猫さんから蒼君は美大生で料理は趣味だという事を聞いた。だから色味も気になったんだ…彼の手は物を生み出す手なんだなと思った。


「縁ー!!ちょっとオレ料理考えたんだけど見てくれるか…っと、忙しい?」
「ううん…平気…凄い…美味しそう」

あの日以降たまに蒼君は仕込をしている時に顔を出しては自分の考えた創作料理を僕に見せてくれる。料理の事についてなら口下手な僕も話せるし、プロ顔負けの料理を作って驚かせてくれる蒼君といるのは勉強にもなるし楽しい。

「蒼君、料理どうして好きなの?」

僕はこの前から気になっていた事を聞いてみた。食べるのは好きそうだけど作るっていうイメージが蒼君の見た目からは想像しがたいからだった。

「んーーー…必然性と考えた物を形にするのが好きだからかな。料理って一番身近にある想像できるモンだろ?」

物を生み出す手を持った彼らしい回答。必然性?と首を傾げていると随分前に両親を亡くしているからと教えてくれた。僕は何て嫌な話させてしまったんだろう…。

「ごめんなさい…僕…」
「あー;そんな顔しなくていいから、なっ!寂しいとかねぇし」

落ち込んだ僕を見て蒼君は苦笑しながらもフォローしようとしてくれた。やっぱり蒼君は優しい…。
その時、店のドアが開き若干機嫌の良くなさそうな猫さんが顔を出した。そして僕らの前にある料理をジッと見てニンマリと笑う。

「あーまた縁の飯喰いに来てんのかー?最近縁オレに試食頼んでくれなくなったのはお前のせいだったんだなーww」
「ちげぇよ。オレが作ったのを縁に感想聞いてんだよ。つーか何でお前ここにいんの?サボリかぁ(笑」
「へー?蒼お前も最近オレに試食頼まねーよなー二人とも仲良くなったなーwwサボリでココ来るかよ…オレは颯に用があってなーあのおバカ二人の事で;」

仲良くなったという猫さんの言葉に一人アワアワしてたんだけど蒼君は平気そうに返事を返してる…。そうだよね…別に仲良くなるなんて普通だし………って僕…何を!?


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