お馬鹿が一途になる瞬間 3


「ぇ…叶く…」
「名前呼ばないでいただけますか。後、二度と私の前に姿現さないでくださいね」

着崩れを直しながら立ち上がった叶君は冷たい目で僕を見下ろしてた。何か頬がジンジンするのは叩かれたからかな。

「頼サンといい…下は馬鹿な人ばっかりだね」
「尊は黙ってろ。叶…一応聞くケド同意じゃねーんだな」
「当然です」

呆れた顔で僕を見てくる尊君の言葉は痛いなぁ…叶君なんてもう僕の事見てくれないし…。
猫君は下に電話して颯君に来るよう言ってるみたい。あーあ、僕も頼君と一緒で出入り禁止かぁ…ちょっと頼君の気持ち判っちゃったなぁ…。


「澤…お前は…ったく;」
「ごめんねぇ…颯君」
「オレもあんま言いたくねーケド、もちょっと店員の躾しといた方がいいと思うぜ?」
「…あぁ…お前も含め、検討しておく。行くぞ、澤」
「相変わらず冷たいなー颯はww」

颯君と猫君の話をぼんやりと聞きながらこの二人って変な空気とか思ったりしてたんだけど僕叶君に謝ってないよねってふと思った。

「あ、のねぇ…叶君急にゴメンネ…でも、嫌がらせとかじゃないから、僕…」
「颯さん、早くお戻りになられた方がいいのでは?」

叶君は僕の言葉を遮って帰りを促す。あーあ…好きって言わせて貰えないなんてねぇ… 建物から出て二人で下のお店に戻る途中、突然颯君に頭をポンポンと叩かれた。

「…澤…お前が泣いても叶は許してくれないぞ」
「……ぇ……」

自分の頬を触るとホントだー…濡れてた。
振られた事も今までに何回もあるけど泣くほどって初めてかも…。あーあ…頼君流に言う運命の相手って事なのかなぁ…少なくとも僕にとっては。

「なんかねぇ…ホントに叶君の事…好きみたいなんだぁ…」
「……そうか…」
「うん…思いっきり嫌われちゃたみたいだけどねぇ…」



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