novel | ナノ


→友人帳・神様

・あまつき

この世界とは何なのだろう。正常と言えるのだろうか。私も、果たして普通と言えるのだろうか。

例をあげるとするならば

例えば、この世のものならぬ存在が視えるのは、普通なのか。

空に、網がかかっているように見えるのは、普通なのか。



「おーい、準備できたかー?」

縁側に座り込んで虚ろに空を眺めていた彼女に、穏やかな声が降りかかる。

沈みかけていた意識は簡単に引き戻され、まだ幼さの残る、だけれどどこか大人びた雰囲気を纏ったその少女は結うことのされていない長く艶やかな黒髪をなびかせながらゆっくりと振り返った。

「沙門様、はい、もう行けますよー。でも本当に私だけでいいんでしょうか?」

「いいんだよ!お前は頭がいいし、人に教えられる。それに何より、子供からの評判がすこぶるいいからな」

地域密着型の寺の住職であり、彼女が居候として世話になっている沙門。彼はこの江戸において、子供達を相手に読み書きの教えを行っている。

彼女も何か彼の役に立ちたいと、その授業についていったことが、全ての始まりだった。彼女も子供達に教えている内にいつの間にか馴染んでいってしまったのだ。

そうして沙門が忙しい日は代役として行くことが多くなったわけなのだが、不安というものはやはりある。

それでも、そんな不安を口にした所で、彼は優しい言葉をかけてくれるのはわかりきっていた。だから少女は小さく、本当に小さく笑って、それ以上何も言わずに立ち上がった。

「それでは、行って参ります」

「気をつけてな!」

優しい眼差しを背に受けながら、彼女は歩き出す。だがふと思い出して、着物を翻した。

「あ、そうだ。朽葉が帰ってきたら伝えておいていただけませんか?“おいしいお菓子を貰ったから一緒に食べよう”って。あと、会えたら紺にも」

了承の意を込めて大きく頷いた沙門を見て、今度こそ少女は笑う。そして彼女の姿は門の向こう側へと消えていった。

世界は回り始める。

それは少女と、彼女の大切な人達を巻き込んで。

やがて、寺に帰り、見知らぬ異邦人と出逢ったその瞬間から

運命は狂いながらも動き出した。

(運命なんて、変えましょう)



暁の先に見えるもの

夢主は彼岸の人間ではない設定でした。なのでカタカナわからない。すごく原作沿いでやりたかったのですが、本編が複雑すぎて断念。



・まどマギ(男主)


「なぁ、今日どっか寄って帰る?」

「いいねー。ゲーセン?」

「何か新しいリズムゲー出たって聞いたし、そこ行くか!!お前も行くだろ?」

橙に染まりかけた街道を歩きながら、一人の少年はそう声をかけた。

かけられた方の少年は、まるで聞いていなかったとでもいうように、色鮮やかな噴水から視線を友人へと戻した。

「あー…ごめん。俺今日はパス」

どことなく掴みどころのない雰囲気を纏った彼は、やはり何を考えているのかわかりづらい瞳を友人二人へと向けている。

普段彼は付き合いが悪いわけではない。むしろいい方だ。話だって面白いし、人望も厚い。故に学校では男子だけでなく、女子からの人気も高かった。

ただ、その中でも唯一短所と呼べるものがこの彼の気まぐれさだった。

気分が乗らなかったり、己の関心次第で行動を起こすのをやめることが多々ある。

二人もそんな彼の性格は熟知していたので、困ったように笑いながら「そっか」と返すだけだった。

「じゃあ、俺ら行ってくるから…って、あれ…?あいつ…」

そうして歩きだそうとした二人だったが、見知った後ろ姿を確認してふと立ち止まる。

「あれ倉本だよな?何やってんだろ。ふらふらしてるし…」

少年もそちらに目をやる。あれは確かにクラスメイトで友人の倉本だ。だがどこかいつもの彼とは違っていると感じた。

彼は普段からとても快活で体育会系なのだ。それが今は背を丸めて、何かに縋るように、足を引きずるようにして今は改装中のビルの中へと消えていった。

「何やってんだ…?倉本のやつ…」

心配そうに彼を見つめる友人達をよそに、少年は進行方向をぐるりと変える。何となく、彼をあのまま放っておいてはいけないとそう思ったから。

「俺、ちょっと倉本のとこ行ってくるわ。じゃあまた明日な!」

「え?あ…おいっ…!!」

友人の制止も聞かずに走り出す。いちいち説明している時間はない。早くしなければきっと取り返しのつかないことになる。

薄暗く不気味なビルに足を踏み入れれば、機材などが進行を邪魔をする。
おまけに内部は同じような風景ばかりが広がっていて、倉本の姿を探すどころか、一度行った場所さえ忘れてしまいそうだった。

「倉本!!いたら返事しろ!!どこだっ!!」

声をあげても反応はない。だがその代わりに、カンカンと、無機質な建物の中で階段を上がる足音が聞こえた。

追いかけて階段を上がっていけば、最後には屋上へと繋がる扉。開けた先に広がっているのは、果てしなく大きな空と、壮大な景色。そして非現実的なまでに生気を失って飛び降りようとしている倉本の姿だった。

「おいっ…!!何やってんだ!やめろ!」

慌てて走り寄って引き止めれば、か細い「離せ」という言葉が紡がれて、当然のように彼は暴れる。

無気力な態度だったくせに反抗する力はイヤに強い。少年は眉間に皺を寄せて拳を握りしめた。

「悪いな倉本…文句とか罵倒は後で死ぬほど聞いてやるから…今は寝とけ!」

鈍い音が響いて、拳は静かに倉本の腹へと沈んだ。

少年は安堵したように疲れきったため息を一つつくと、倉本を床に寝かせて、自分もゆっくりと座り込んだ。

制服のネクタイを緩めて、気を失っている倉本に目をやる。
彼は何故こんなことをしようとしたのだろう。毎日学校で会っても、自殺しようと思うほどの悩みを抱えていたようには見えなった。ただ気づかなかっただけなのかもしれないが、それにしてはあまりにも彼の行動は極端すぎる。

その時、彼の首筋に見えたものに、少年は目を留めた。

「…何だこれ…痣か…?」

痣にしては毒々しく見えるそれ。どちらかというとタトゥーのような。

触れようと手を伸ばした瞬間、目眩が、否、世界がぐにゃりと曲がりだした。

「なっ…!?」

歪む景色と同時に響き出す不気味なおよそ人間のものとは思えない笑い声。周りの景色も、もといた屋上ではなく、言葉では説明し難い混沌としたものへと変わっていく。

何がなんだかわからずに倉本を庇うように前に立ちながら辺りを見回せば、漫画に出てきそうな未知の生物が己を取り囲んでいた。

あんぐりと、ただ口を開けることしかできない少年の意識を現実へと呼び戻したのは、聞き慣れない少女達の声。

「マミさん!!あっち、男の人が二人取り込まれてます!!」

「わかったわ。美樹さん、鹿目さん、私から離れないでついてきて!!」

「は…はいっ!」

やがて、少年を守るように駆け寄ってきた鮮やかなピンク色の髪とアクアブルーの髪の少女と、可愛らしい衣装を身に纏ったイエローの髪の少女が繰り広げる戦闘劇を見つめながら

少年は己の中の平穏が壊れる音を

聞いていた。

(ようこそ、麗しの非現実)



感情ドロップ

これでマミさんか杏子落ちにしようとしていたもんだから笑えます。というか男子にはキュゥべえ見えるんだろうか。そこはご都合主義でなんとかなるか。長編に男主ってやっぱりどうなのってことでボツに。

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