novel | ナノ



・学ベビ(竜一以外の誰か落ちになるはずでした。まだ高校前設定)




もうすぐ夜の帳が辺りをつつみはじめる頃、今日もいつものようにその部屋への扉は開かれる。

「あ、狼谷!今日はお前が鷹くんの迎えを?」

「ババアが忙しいっつーからな」

この森ノ宮学園にはベビーシッター部という部活が存在する。それは幼い子供をもつ共働きの女性先生がその子を日中預けられるというもの。

大体の先生は仕事が終われば迎えに来てくれるのだが、この狼谷家だけは少し違っていて、先生の仕事が長引けば、代わりにお兄さんが来ることが多いのだ。

現在部で預かっている子供の数は竜一の実の弟を抜いて五人。そして肝心の部員数は子供の人数より少ない三人。しかもその内一人は学園の現役生徒ですらないというなかなかに大変な状況。


「…で、あいつらは何やってんだ?毛だるまみたいになってんぞ」

「え?あぁっ!忘れてた!ほら、みんなそろそろどかないと潰れちゃうよ!!」

鷹、奇凛、拓馬、数馬、美鳥という部の全員の子供達が楽しそうに何かに抱きついたり乗っかったりしている何ともおかしな映像。

竜一が急かせば皆渋々ながらも中心から離れていく。
乗っかられていたのはもちろん人間で、この部のもう一人の森ノ宮学園女生徒だった。

彼女は困ったように笑いながらも楽しそうに体を起こす。

「なんか最近はみんな更にパワフルになったねー。お、狼谷くん、こんにちはっ。ん?今はこんばんはかな?」

まるで風船を連想させるような少女。傍にいるだけでこちらの心も溶かされてしまいそうな雰囲気すら纏っている。

狼谷はチラと少女を見て、それから彼女の隣で眠っている人物を蹴り飛ばした。

「兎田はいつまで寝てんだ」

蹴られた兎田と呼ばれた男性は「いてっ」と間の抜けた声をもらしながらのそりと起き上がる。

「隼〜、お前もちっと優しく起こせねーの」

彼はベビーシッター部の部員ではない。そもそも学園の生徒でもない雇われ部員なので日中竜一達が授業をうけている時は彼が子供を見ていられるのだ。

もっともこんな風によく眠っていることが多いので危なっかしいことこの上ないのだが。

そうして今度は兎田を相手に遊びを再開した鷹達を見ながら少女は穏やかに笑む。

はたから見れば何故笑っているのだと言われるだろう。

だけれど、この光景は少女にとっては

確かに幸福だった。

(何でもない日常こそ宝物)



日常パステル

これもとてもやりたかった長編です。ちなみに夢主は特進クラス設定でした。関係は兎田→夢主←狼谷、時々根津君にしたかった、いや、今もまだやってみたいです。

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