俺には気配を感じ取ることはできても妖が見えない
それは友達が困っていても助けになってやれないということで少し歯がゆい
それに困るのはそれだけが理由じゃなくて
「田沼君の庭、池の魚が綺麗だね」
「え…?あ、それは俺には見えないんだ」
「じゃあ…これは妖ものの池?」
「あぁ、そうみたいだ」
「なら夏目君には見えてるんだよね。ね、綺麗だよね、あの魚」
「そうだな、綺麗な赤だ」
「だよね!!」
こうして二人が親しげに話す度に
俺の心は不思議とざわつく
二人共大事なんだ
だけど、俺はあいつのことが好きになってしまって
それからは夏目に変な感情を抱く
それは恐らく嫉妬というやつで
我ながら情けないと思った
「いつか田沼君にも見せてあげたいなぁ」
「いや、俺は…」
「きっと何とかして見せてあげるね。約束!」
とびきりの笑顔が俺だけに向けられた時
それだけで胸のつかえが取れるなんて
我ながらまた情けないと思ったんだ
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