殺風景な景色

白しかないその世界の中では無機質な機械音だけが響いている

ガラス越しに見える彼は、やはり今日も目を開けることはない


「私はあなたも、惨劇を引き起こすものだと思っていたわ」

小学生くらいの小さな少女から発せられるおよそ子供らしくない声

梨花ちゃんは壁に寄りかかりながら深く澄んだ瞳を私に向ける

「あぅ〜…ミョウジの想いはそんな汚れたものではないのです」

「羽入は優しいね。大丈夫だよ、素直に言ってくれて」

「ですが…」

「私だってわかってるの。もう少し歪んでたら…私はきっと詩ぃちゃんを…」


悟史君を好きになったのは私の方が早かったはずだった

だけど

二人の距離感はいつの間にか私では追いつけないものになっていて…


悟史君が大好きだった

でも私は詩ぃちゃんも大好きだった


嫉妬で頭がおかしくなりそうな時になっても

詩ぃちゃんの優しい笑顔が頭に浮かんで、それだけでもう私は動けなくなったんだ

「だって詩ぃちゃんずっと私に悟史君とその日あったこと…話してくれるんだよ?私が悟史君のこと好きなのも知らないでさ…」


詩ぃちゃんから紡がれる言葉の一つ一つ

彼女の仕草の一つ一つ

揺るぎない純粋な恋心

それをまざまざと見せつけられて



失わせてはいけないと思った

割り込んではいけないと思った

大好きな二人の幸せを、願わなければならないと、そう思ったの

「わかってるんだよ、わかってる…でもさっ…やっぱりちょっと悔しいんだ…ダメな奴だね…私」

詩ぃちゃんと一緒にお見舞いに来ないのは

こうして自分が卑屈になってしまいそうだから


「ミョウジはダメなんかではないのですよ、にぱー」

「梨花…ちゃん」

「ボクもそう思うのですよ。ダメではないからこそ、その意志の強さでミョウジは惨劇を引き起こすことはなかった」

「あり…がとうっ…」


我慢することをやめた私の目からはいくつも涙がこぼれ落ちる



冷たいガラスの向こうの悟史君は相変わらず何も言わない

「早くっ…戻ってきてよ悟史君…!」


私の声は虚しく冷たい部屋に鳴り響くだけだった

あれだけうるさかったはずのひぐらしの声も


嘘みたいに綺麗に消えてなくなっていた



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