「なぁ、お前はさ、好きな男いんの?」
「今はいない」
「前はいたんだな」
「うん、大好きだった」
「…フられた、とかか?」
「違うよ。告白もしてないもの」
「なら何で諦めちまったんだ」
「その人には好きな人がいてね、相手は私の友達だった。友達もその人が好きで…好き、というか絆っていうのかな、とにかくそんなので結ばれてて」
昔から間に私が入る空間なんてなかった
だけれどもしかしたらって
何年も何年もそんな想いを引きずって
「私は二人とも大好きだから、だからもういいの」
「もったいねーな」
「え…?」
「だって二人はつき合ってねーんだろ?だったらそんな簡単に諦めていいのかよ」
「……れを…」
「ミョウジ?」
「それを…善吉が言うの…?」
視界が滲む
彼の顔がわからない
私が今どんな顔をしているのかもわからない
でもこれだけはわかるわ
私って本当に嫌な奴
こんなこと言って泣いて、そして善吉を困らせて
ずっと隠していこうと思ってたのにもうダメだね
「好き…好きなの、善吉のことが」
聞いて、届かなくたっていい
聞いてほしい、知ってほしいの
ただ
ただそれだけでいいから
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