夜の暗闇の中で静かに響く靴音

静寂に包まれた場所にそれあまりにも大きく聞こえた

「手でもお貸ししましょうか?」

皮肉混じりに発せられる言動も、今では慣れてしまった

「無様だね。計画通りにコマを動かしていつもいつもほくそ笑んでるあんたがさ、その綺麗な顔に傷作っちゃってんの。サイモンに感謝しないと」

「…こうなることを君はわかってたみたいだね」

「さぁね」

「ムカつくなぁ、その態度。殺してやりたくなるよ」

下から見上げる女の顔はおよそ人間らしくない

今まで会ってきたどんな奴よりも人間らしくなくて不気味だった

「ははっ、けどあんたにはその姿が案外お似合いかもね。私の所にも何者かけしかけてくれたみたいだけどさ」

「あいつらどうしたの?」

「おや、心配でもしてるってわけ」

「別にどうなろうと関係ないんだけどさ、今回は結構上手く出し抜けたと思ったんだけどなぁ。何で君死んでないの。…やっぱウザいよ、あんた」


にやりと妖しく弧を描く唇

引き裂いてやりたい


途端に生気を帯びて輝く瞳

潰してやりたい


こいつの、この女の全てをめちゃくちゃに壊してやりたい

「私がウザい?殺してやりたい?じゃあ私はあんたが大好きだよ。愛してあげる。そうして苦しんでね、そんでいつまでも私の手のひらの中で足掻いてろ、格下君」



そして

憎しみの刃はいつしか歪んだ愛情へと変化した



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