「君は確か、チナツの…」
「……ども」
「一歩遅かったな。チナツはたった今…」
「…言わんでいいです。全部見てましたから」
「そうか。なら君も私を憎んで殺しにかかってくるのか?」
「ココ・ヘクマティアル…俺はあんたを憎んでなんてないですよ。死なんて慣れっこだ。いちいち仇討ちなんてしてたら頭おかしくなっちまう」
「それはよかった」
「ただ今日は…今日だけは…“手が滑って”あんたの頭ぶち抜いちまいそうなんだ…チナツと二人にしてもらっていいかい…?」
「わかったよ…ただもうすぐここに君にとって面倒なのが来る。早く立ち去ることだ」
「は、なかなか武器商人様は慈悲深いようだ」
「フフ、どうかな。これから君はどうする、一人でオーケストラを続けるのか?」
「まさか。一人じゃアンサンブルも出来やしねぇよ。チナツもいなくなった…俺が演奏する理由なんてもうない」
「…そうか。では我々はもう行こう。別れの邪魔をするほど野暮じゃない」
「ばっかだな、お前は。あんだけ止めたってのに…」
結局感情に流されて
こんな姿になって
死んでんのにみっともなく涙流して
こんなの殺し屋失格だぜ
なぁ、チナツよぉ
「なーにが、“あたしの人生メチャメチャにしたくせに”だよ…師匠に何て口きいてんだっつの…」
なら俺は
お前に人生メチャメチャにされた俺はどうしろっつーんだよ
気づいてたかどうかはわかんないけどな
「チナツ…空は綺麗だっただろ…?お前下ばっか向いてんだもんなぁ。これなら…俺の楽器も最高にいい音奏でられる…」
これから先一人で演奏することなんてないのなら
もうおしまいにしよう
別にいいだろ?チナツ…
どうせカーテンコールもありはしないんだから
「……俺も大概ばかな野郎だ…」
脳髄に直接響く音
あぁ…なかなかいい音じゃねぇか
俺の音楽…
もうちょい待ってろよチナツ
すぐ会える
地獄でもコンサートしようぜ
← → /
back