「行くのか」
不気味なほど似合う黒のドレスを身に纏った少女
俺はきっと二度とこんなに綺麗で、でもとても儚い人に会うことはないだろう
「…あなたには、関係のないことよ」
「あぁ、関係ない。あるわけがない」
「だったら、もう行って」
「断る。俺のことは気にせず過去に戻ればいい」
「……あなたは…どうしていつも…」
いつの時間軸でも、きっと俺はこうしてきたんだろう
ほむらが完全に消えてしまうまで
ずっと、見守り続けて
ほむらは泣きそうに俺を見つめ返す
それを
何度も、何度も
何とも単純だ、俺らしい
「ほむら、消える前に一つ、聞いてもいいか?」
「……何」
「お前が繰り返してきた時の中で、俺がたった一度でも、ほむらと結ばれなかってっことはあったか?」
「いいえ……なかったわ」
「そっか。ならいい」
「いつだって私は…まどかと……そして雄一を捨てられなかった。だけど…いつも最後にはまどかを選んでしまう…」
「それでいいんだよ。鹿目まどかを守って、そんでその後に本当の意味で俺の隣に立ってくれればいいんだ」
「…本当にごめんなさい」
「謝んな」
「好きだったわ…雄一」
「今はもう、好きじゃないって言い方だな」
「それは…」
「俺は、今も昔もこの先も、お前が好きだ。それをなかったことにはできない」
「私だって…!」
「わかってるよ。だから何度繰り返そうと俺の傍にいてくれようとしたんだろ?」
「……」
「俺もさ、どっかでは覚えてんだろうなぁ、きっと」
「…何の…話…?」
「ん?何でもねぇ。ほら、早く行きな。グズグズしてると未練ばっか残ってくから」
「………そうね」
「新しい時間で会おうぜ。んで、何度も言われてると思うけどまた言わせてもらうよ。俺は、お前を忘れない」
「……ありがとう……さよなら」
消えていくほむらの体
何度失ったかもわからないその何も空間に
俺は静かに手を伸ばしていた
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