「J、くすぐったいよ」

「そう?」

「うん。…何かあった?」

「別に、何も」

「嘘。絶対何かあった」

「ないって。信用ないなぁ、僕」

「私はあなたをずっと見てきたんだよ?わからないほど疎くないの」


それは一体どういう意味での見てきた、なんだい?

君の優しさって時々ナイフみたいになるね

自覚なんてしてないんだろうけど


「見てきた、ね…それは、僕が導師の息子だからかな」

「J…?何…言って…」

「答えてよ。君の見る僕の先には何があるの?行き着く先はやっぱり信仰心?」

君をこうして抱きしめられるのも

頭を撫でることができるのも

途方もない信仰心からくるものなのかな


「…呆れた、そんなこと考えて今まで一緒にいたの?」

「あれ、違った?」

「半分当たりで半分ハズレって感じかな。最初は本当に信仰でここに来た。けど今はバカバカしくなっちゃった。導師の話を聞いて考えれば考えるほどそう思うようになってたの」

「…ふぅん」

「あと、そんな信仰心より強い想いができちゃったからね」

「その話、聞かせてよ」

「わかってるくせに…言わないよ。私のことちっとも理解してくれてなかった人には言ってあげない」

「ごめんごめん、それは謝るよ」

「…私はこーんなにJのこと好きなのにさ、Jのバカ」

「うん、ごめんね。でも僕もね、君のこと大好きだからさ、忘れないでほしいな」


ゆっくりと重ねられる唇

本当の本当に僕だけのもの

僕個人を愛してくれる彼女

何で今まで不安なんか感じていたんだろう

バカバカしいにもほどがある


あぁ、今すぐファルコンにでも自慢してやりたい気分



「君はさ、僕が行く所にはどこにだってついてきてくれる?」

「いいよ。どこにだって、私はJと一緒。ふふ、これじゃ信仰対象がJに移ったみたいだね」

「なら僕も、君に心酔してるかな」

「…私、あなたに会えてよかったよ。大事な気持ちに気づかせてくれたから。好きだよ、J」

「うん、僕も大好きだよ」

もし


もっと早く君に会えていたなら


もしかしたらもっと別の未来があったのかもしれないね



そう

君と行く別の優しい未来が



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