「魔法少年ってあったらいいと思わねぇ?」

「はぁ?雄一…いきなり何言っちゃってんのあんた」

「女だけなれるなんてズルいじゃん」

「あんたがキラキラのカッコして戦うとか気持ち悪ぃんだけど」

「何でキラキラのカッコって勝手に決めんだよ。タキシードでも着るってか」

「はん、何ならドレスでも着てみたら?」

「やべ、想像した…気持ち悪っ…」

「馬鹿だろお前」

「いや、でもなぁ…できねぇかなぁ、魔法少年」

「仮にそんなもんがあったとして、あんたは何を願うってのさ。そんなどうしても叶えたい願い事があるとは初耳なんだけど?」

「ん?知りたい?」

「何だよ。もったいぶるなよな!!」

「俺の願いはただ一つ、“杏子を人間に戻す為”だよ」

「なっ…!?バッカじゃねぇの!?んなこと…!」

「無駄?そんなことないだろ、杏子だって人間に戻りたがってるくせに」

「そういう問題じゃねぇ!!何で他人の為に魔法なんか使おうとしてんだって言ってんだ!!それがどんだけ無意味なことか雄一はよくわかってんだろ!!」

「わかってるよ。杏子は他人の為に願って…結果お前の家族は壊れた。あの美樹さやかって子もきっといつか後悔するだろうなぁ」

「だったら!!そんなバカげたこと言うなよな…」

「これのどこがバカげたことなんだよ。俺は杏子の為に願って、それでゾンビ君にされたって何とも思わない」

「何でだよ…ゾンビなんてなっちまったら…」

「別にいいじゃねぇか。ゾンビなんて言うからダメなんだよ。あの猫だか兎だかの…きゅーべー、だっけ?あいつも言ってただろ。“魂を目に見える形にした”って。俺はそれ便利だと思うけどな。魂の在処なんてどこだっていい」

「…あんたやっぱ変な奴だよ。そんなこと言うなんてさ…でもあたしは雄一がそんな風になるなんて…」

「何だ、心配してくれるのか?やっさしーねー杏子ちゃんは」

「ふざけんな!!あたしは本気で…!」

「怒るなって。俺は絶対に後悔なんかしねぇよ」

「何でそう言えんのさ」

「だって杏子は願った対象を失っちまったから後悔したんだろ?俺はその対象を失わないから大丈夫」

「…!!」

「お前は俺が魔法少年になっちまったって俺の傍にいてくれんだろ?」

「そ…そんなのわかんねぇし!!雄一のことなんて捨てちまうかもなぁ」

「捨てないよ。何故なら杏子は俺に人間に戻してもらった恩があるから」

「……何だよそれ、ずりぃ奴」

「ずるくていい。それで杏子を独占できるなら」

「あーあー、わかったわかった!一緒にいてやるよ!!いりゃいいんだろ!?」

「ははは、サンキュ。んー…それより腹減ったな。飯食いに行こうぜ飯」

「雄一のおごりなー」

「……割り勘」

「雄一のおごり」

「……割り勘」

「雄一のおごり」

「…まぁいいか。今日の俺機嫌いいし」

「おっ、さすが雄一、太っ腹だねぇ!」

「うっせ、よく言うぜ」

「あはは」


こうして飯食って、日中ずっと一緒にいられるならそれでいい

好きだよ、杏子

お前が好きなんだ



あーあ

ホントにねぇかなー

魔法少年



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