「月詠、私ね、地上に行きたいんだ。こんなとこから出ていきたい」
「…馬鹿なことを。あの鳳仙がいる限りそれは無理な話じゃ」
「む…。無理でも願うだけならいいでしょ」
「口を慎め。いつ誰に聞かれているとも知れん。ぬし、殺されるぞ」
「平気だよ。鳳仙はほとんど日輪様のことしか気にかけてないもの」
「しかし…」
「平気だってば。あ、そうだ。ねぇ月詠、キセル一本くれない?この前なくしちゃって」
「またか…ぬし、この前もなくしておらんかったか?」
「あれは貰い物。嫌な客からの贈り物でね。早々に捨ててやった。」
「ならわっちのも捨てるのか」
「捨てるわけないでしょ」
「…ふぅ、仕方がない。くれてやるから、大人しく客の相手をして来なんし」
「へへ、ありがとう!それじゃ、行ってきます。いつか、外に行けたら月詠も日輪様も一緒に行こうね」
「頭!!瑠香が…!」
「瑠香がどうした。騒がしいぞ」
「それが……脱走しようとして鳳仙の部下に見つかり…始末されたそうです…」
「……………そうか、やはりやったか……あの阿呆め」
「それで……瑠香が死ぬ間際までずっとこれを握っていたそうで…」
「…わっちのキセル…いや、今はあやつのだったか。なぁ、瑠香はどこで殺された…?」
「地上に出た所を背後からだったようで…」
「なら…あやつは外の世界を拝めたのだな」
「えぇ…きっと…」
「…ならいい」
「あれ?月詠さん、そんなキセル持ってましたっけ?」
「拾ったアルかツッキー?」
「ん…?あぁ、これはわっちの物ではない。これは旧い友人の物じゃ」
自由を求め足掻いた女との思い出
共に見ることは叶わなんだが…
なぁ
瑠香
やっと吉原にも太陽が出たぞ
綺麗なものだろう
なぁ
ちゃんと見ているか…?
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