「ねぇ瑠香。まだ怒ってるの?」

「……知らないっ」

「ごめんって。女の子とメアド交換しただけじゃんか」

「……この前も同じこと言ってた…」


毎回毎回虚しくなる。

女癖が悪いこの男。

身分が身分なだけに殴りとばすこともできない。

「……もう白澤なんか違う女の子のとこに行っちゃえばいいんだ…」

「あ、それは無理」

「何でよ…私なんかよりかわいい子なんてたくさんいるじゃん……なんか私ばっかり白澤のこと好きで馬鹿みたい…」

本当に馬鹿みたいだよ。

いつも私ばっかり…

「それはないよ。だって僕の方が瑠香のことが好きだもん」

「…絶対ない」

「いいや、僕のが好きだね。証明してみようか?」

「…んっ…ちょっ…と…!!」

着物の中に伸ばされる手。

まるで壊れ物に触れるように優しく肌を撫でる指。

憤りなんてそれだけでどこにいってしまう。


「……瑠香、好きだよ。本当に」



ほら

このたった一言で

また私は彼に流される。



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