朝の暖かな陽光差し込む部屋で先にうっすらと目を開けたのはアールの方。
隣で眠るナマエは規則正しい寝息を立てて穏やかな寝顔を無防備に彼へとさらしていた。
それがなんだかおかしくて彼女の前髪を軽く触れるようにさらりと撫でれば、くすぐったいのか身を捩る。
そのまま暫く触れていると彼女はくぐもった声を微かに発して目を開けた。
「ん…」
「おはよう、ナマエ」
目をこすりながらおはようを返すナマエはやはりまだ眠いのか、まるで微睡んでいるかのような瞳を向けてくる。
「昨日は少し無理させちまったからな…まだ眠いか?」
ゆるく首を横に振る彼女からは気を遣ったような感じは伝わってこない。
本心から言ってくれているのだと実感すると同時にそれはアールの中に言い知れない幸福を静かに産み落としていった。
「でも今日はお休みだし…もうちょっとくらい寝てても誰も怒らない、よね?」
甘えるような、悪戯を企むような、そんな表情を浮かべるナマエに、妙に心臓が跳ねる。
いつの間に彼女はこんなにも己を揺り動かす存在になったのだろう。
これだから多少無理をさせてしまうようになるのだし、わがままだって聞いてやりたくなるのだ。
「そうだな。どうせ他のみんなだって好きにしてるだろうし」
「お休みに寝ちゃうの、もったいないけどね」
「いいんだよ。疲れてんだからさ」
にこやかに微笑んでただ話に耳を傾けるナマエは本当に眠そうで。
話していたらその内また深い眠りに落ちてしまうだろう。
でもそれはきっと自分も同じで。
そうしてどちらからだっただろうか。ふつりと途切れた会話を合図に
二人は穏やかな休日の朝に
静かに溶けていった。
(溶けて混ざり合った彼らは夢を共有するのでしょう)