○月×日、今日も我が小隊のみんなは元気です。
「今日は思う存分飲むぞー!」
「いやいやいや、ダメですから。止めてくださいココさん!あなたはダメ!」
「大丈夫ですよナマエ。酔っぱらってしまっても私が介抱しますから!」
「と言いつつその手の動きは何!あと鼻血をふいて」
「なら俺がやろう!」
「それが一番ダメだというのがわかってないのかなアール君」
これは夕食を食べ終えて、のんびり過ごそう思っていた矢先の出来事でした。ココさんがお酒なんて飲んだら確実に何かが壊れる。机から椅子、多分いつかは誰かの体が。
そういえばこの前はヨナがパイルドライバーをくらってたっけ。あ、ちなみに私は卍固めくらいました。え?どうだったかって?そんなの痛かったに決まってるじゃないですか。痛みからの快感を覚える新境地は絶対に開きませんよ、私は。
「せっかく明日は休みなのにー」
「そのせっかくの休みを二日酔いで潰したいのなら止めませんが」
すりすりと私に頬を寄せながらねだるココさん。相変わらずスベスベの肌で軽く劣等感を抱いてしまいます。
「ヘッヘヘ、いいんじゃねェ?せっかくの休みだ。つーわけで俺もタバコを吸わせてもらうとす…」
「「やめてください」」
「ハイハイ、わかってますよ」
レームはいつもこうです。タバコを吸うのを嫌う人間が場に二人もいるというのに遠慮する素振り一切合切なし。そんなに吸いたければどこか違う、タバコを吸う条例でもある星に行っていただきたいものです。恐らくあと何万光年かすれば、そんな星も見つかるでしょうから。私はそんな星絶対行きたくありませんが。仮にココさんに命令されたとしても絶対行きません。従うくらいならチェキータさんに木の棒一本で決闘挑む方がマシですとも。
「ははは、レームのおっさんまた叱られてやんの」
「ナマエはそこんとこだけは厳しいな。さすが衛生兵!」
「いや別に健康面でレームがどうなろうと知ったこっちゃないんだけどね。私の健康の方がちょっとね」
「自分の為かよ!」
当たり前です。世の中ギブアンドテイクですから。レームの欲求は満たして私は健康を損なうなんてありえませんよ。
あれ?でもそうなると毎回毎回お尻を負傷して治療してあげてるのに私ルツから何ももらってないような気が。いけないいけない私としたことが。今度ルツが怪我したらお菓子の詰め合わせでも買わせましょうか。
「ルツ、楽しみにしてるからね」
「え、何、何の話?ちょっ…怖ぇんだけど!?」
慌てるルツが面白い。何だか違う意味で新境地を開いてしまいそうです。
「まぁ何にしても休日楽しみだなぁ。久しぶりに家族に長電話でもしてしまおうかな」
「またのろけですか、マオ。私もココのことでなら幾らでものろけられますが。そういえばこの前…」
「ごめんバルメ、それ後でにしてー」
あ、ヤバい。バルメに切り刻まれそうです。だってめっちゃ睨んでる。めっちゃ睨んでるよ。
ヘルプの意味を込めてヨナを見る。年下に助けを求めるのもどうかと思いますが彼の精神年齢はあまり年下には思えないのでノープロブレム。
「ハッハッハッ、ヨナ、ナマエが助けを求めてるぞ」
「何で僕なんだ?ワイリにでも頼めばいいのに」
「ヨナ君や、ワイリに頼んだらとりあえず爆発しちゃうからね」
「ナマエ、そういうこと言うとまたヨナ君に避けられるから!あぁっ、ほら、ちょっと目が冷たくなってる!!」
ワイリ、大丈夫です。それはヨナの通常です。すごく言いたかったけれど黙っていてあげます。私はなんて優しい衛生兵なんでしょうか。
「ワイリはアブナい奴だからなァ、しょうがねぇって」
「そうだな。笑いながら爆弾を仕掛ける奴はそうそういない」
「笑いながらマシンガン片手で撃ちまくる奴もそうそういないと思うよ、ウゴ」
あれだけ怪力でポジションは専属運転手ってちょっと面白いですよね。いや、かなり。
あ、そういえばこの前小隊の車にヨナとガチャガチャのカプセルでキャッチボールしててぶつけちゃったんだよね。あれバレてませんように。傷とか残ってないから大丈夫、のはず。
「そういえばナマエ、この前車にぶつけたアレ、大丈夫だったの?」
「うん、とりあえず空気を読もうかジョナサン、ひっぱたくよ」
「え、何、ぶつけたって何を!?ナマエ!?」
「あー大丈夫大丈夫。そんな大したことじゃないから。ちょっとキャッチボールしててぶつけたとかそんなんじゃないから」
ウゴが何か喚いているけどとりあえず無視。これが最善策でしょう。
そうして私は手元の作業に集中する。そうしてしまえば、周りの喧騒もどこか心地よいものに聞こえてくるから不思議です。
「ナマエー、ウゴが何か言ってるよ?」
後ろから抱きついて肩に顎を乗せるココさん。あれ、何か顔が赤いんですけど。ほんのりお酒の香りがするんですけど。やっちゃった?もしかして飲んじゃいましたこの人。
あぁ、ルツとかヨナに構ってるんじゃなかった。
「いいんですよ。ガチャガチャのカプセルごときで車はポンコツにはなりませんから」
「相変わらずだねナマエは。それで?ウゴの抗議をスルーしてまで書いてるそれは何?気づくといつもそれ書いてるけど」
覗き込もうとするココさんを手で制して私は執筆作業を中断する。別にこれは見られて悪いものではないのですけれど。
「私が生きた証を、残しておこうかと」
私が生き、そしていずれ逝くことになるであろうこの世界。私という小さな存在でもこの世に何かを残すことができるのならば、やってみたいじゃないですか。
今、この手記を読んでいるあなたがそれをどう捉えるか、少し楽しみです。
酔狂な奴がいたもんだと思いますか?それとも面白い小隊があったもんだと笑ってくれますか?そうだとしたならばこれ以上幸せなことはありません。
私が生きた世界はそんな面白い連中で溢れているのですから。
あぁ、まるでこれが最後のページみたいになってしまいますね。大丈夫です。明日は休日。きっと今日よりも楽しい何かが起こるはず。
では
今日はこの辺で。