04
ウォール・ローゼ壁内。レイラ達は退却後、無事にエルヴィン達に合流し、街へと戻ってきていた。
右翼、左翼、中央。どこを見ても人数は明らかに減っているのが見て取れる。
レイラは少し前を行くエルヴィンに滲んだ涙で潤んだ瞳を気取られぬように小さく呟いた。


「エルヴィン、今日兵士はどれくらい減った?」

彼は彼女の方を見ずに暫く思案した後、ゆっくりと口を開く。

「4割…といったところだろう。」

「いつもより多いね…」


悲しそうな顔で俯いたレイラに隣にいたリヴァイが何かを言おうと言葉を出しかけるも、まるで泣いている子供をあやすように柔和な微笑みを浮かべたエルヴィンが彼女に話しかけたことによりそれを阻まれた。

「レイラ、そんなに悲しそうな顔をするな」

「でも…大事な仲間達が…」

別にレイラは何も悪くない。リヴァイも言っていたように、レイラ一人で全てがカバーできるわけではないのだ。守るのにも限度がある。

しかし何度そう諭したところで彼女がこの悲しそうな顔をやめることはない。

「確かに今回もその前の壁外調査でも犠牲は多かった。だが、君に救われた者達が多かったのも事実だ。」

その言葉にレイラは弾かれたように顔を上げた。その瞳にはいまだ涙の膜が張っていたものの、少し明るさが増している。

「腰の遺品も。それで救われる者が何人もいる。君の優しさで。…確かにレイラは兵士には向いていないとは思うが私はそれでいいと思う。」

「エルヴィン…」

レイラの頬は彼の言葉を聞いた途端にサッと朱に染まる。気まずそうに顔を逸らすと、リヴァイと視線がかち合った。彼は彼女を見て言葉を投げる。


「女みてぇな顔してんじゃねぇよ」

「………リヴァイ……………やっぱ殴っていいかな…?」

「そんな面で言われても何も感じねぇ」

「…………絶対後で殴る…!!!」

「まぁまぁリヴァイ、恋する乙女の邪魔はするもんじゃないよ、こんな世の中でもそれは同じさ!」

「ハンジ!!なッ…何言ってんの!?」

「あれ?違うの?さっきの表情で絶対そうだと思ったんだけど…あ、免疫がないだけか」

「わ…悪かったわね…!免疫なくて!」

「…………フッ」

「ミケも鼻で笑うなぁ!!」


そんな彼らのやりとりを見て、兵士達は疲弊しきった顔に微笑を浮かべた。

「団長、いつもレイラ分隊長の周りは賑やかですね。何となく暖かい気持ちになるというか…」

「あぁ、そうだな。だからレイラについていこうと思う者達も多いのだろう」


人柄の良いレイラには人が寄ってくる。兵士ももちろんそうだが、街の子供達も。

壁外調査から戻ってきた彼女に小さな子供達が嬉しそうに走り寄っていってはその子の親が何度も「すみません、すみません」と頭を下げている映像を見ることも少なくはなかった。

レイラの隊は結束が強いと兵団内では専らの噂である。








散々からかわれ、疲れたレイラは諦めたように小さくため息をついた。

「まぁ、リヴァイもハンジもミケも後で殴るかぁ。まったく…いっつも私で遊ぶんだから!」

「いやいや、遊んでないよ!それはレイラのその反応が面白いから……っと、そうだ、それよりも」

「ん?」

「ちゃんとみんな無事に帰ってきたよ。君の隊の子達」

ハンジの言葉にレイラは安心したように微笑み「良かった」と呟く。
その横でリヴァイは眉間に皺を寄せて露骨に嫌そうな顔を作った。

「死ななかったのか…あいつら…」

「ちょっとリヴァイ、そんな言い方…みんなが嫌いなわけ?」

「あぁ、嫌いだな。特に…」

リヴァイの口から一人の男の固有名詞が出かけた時、兵団は本部へと到着する。

「リヴァイの言いたい人の事は何となくわかったよ」

レイラは馬から下り軽く笑いながらそう言った。リヴァイもその男を思い出したのか、更に眉間に皺を寄せながら馬を下りる。

「向こうもねぇ、リヴァイの事あんまり良く思ってな「分隊長ーーーーーー!!!!!」

その時突然ドスっという鈍い音と共にレイラの肩にのしかかる何か。それは彼女の首に手を回して後ろからしっかりと抱きついている。

「ルイス…!!びっくりしたぁ…」

「お帰りなさいッス!!」

「うん、ただいま。無事で何より」

「はい!ルイス・シーカー、今日も隊長への愛と忠誠の力で無傷っすよ!」



ルイス・シーカー。レイラの隊の人間で自称彼女の右腕。だが実際には自称という言葉に違わぬ実力を有している。巨人との戦闘は主にレイラの補佐をしている為、討伐数こそ少ないが討伐補佐の数は多い。

随分レイラに惚れ込んでおり、彼女に死ねと言われたら本当に死ぬのではないかと兵団ではそうまことしやかに囁かれていた。


あと


「おいガキ、うるさくてたまんねぇ。黙れ」

「おや?これはこれはリヴァイ兵長じゃないッスか、すいません、ちっさくて見えなかったッスよ」

「レイラ…家畜の躾くらいちゃんとやっとけ」

「こらこら、二人とも、またケンカしないの!」



人類最強の男に真っ向から嫌みが言える図太い神経の持ち主としても知られている。







レイラは言い争う二人やそれを面白そうに眺めているハンジ、オロオロしながら止めに入ろうか迷っている兵士達を見て


「帰ってきたんだなぁ…」



と穏やかに呟いた。


prev next

bkm
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -