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「ところでゼキア、これどうする? 僕らだけじゃ食べきれないよ」
 そんなゼキアの思考を遮るように、ルアスはテーブルの上を指差す。ルカの差し入れは主に新鮮な野菜や果物だった。果物は水分が多くて傷みやすいし、野菜は葉物が多くあまり日持ちしない。早く食べなければ腐らせてしまいそうだ。
「あー、そうだな……レオナさんの所にも持って行くか。構わないか?」
 念のためルカに向かって確認を取ると、もちろん、と彼女は即答した。それを聞いたゼキアは、山と積まれた野菜達を選り分け再び詰め直していく。それにしても大量だ。もしや彼女は最初からこのつもりで持ってきたのではないかと思えるほどである。この分では、分けたところで十分すぎる量が残りそうだ。どう処理するか悩みながらも、黙々と作業を続ける。しかしその傍らで唐突に不穏な台詞が聞こえた気がして、ゼキアは手を止めた。
「そうだ! ルカ、せっかくだしお昼ごはん食べていかない?」
 思わず、耳を疑った。発言主は言わずもがなルアスであるが、一体何を言い出すのか。
「……おいこら、ルアス」
「あら、いいの?」
「せっかくこんなに野菜あるんだし、一緒に食べようよ。いつも貰ってばっかりでろくににお礼も出来てないし……ね? ゼキア」
 一応、疑問形になってはいるものの、ルアスの中では既に決定事項なのだろう。屈託のない笑顔がそれを証明している。咎めるゼキアの声などあっさりと聞き流され、まるで何か言った? と言わんばかりだ。そして勿論、ルカも聞こえない振りである。
「あ、それ僕が届けてくるよ。ゼキアはお昼の準備よろしくね」
「あのなぁ」
「いいじゃない、たまには。……いい加減に仲良くしなよ」
 野菜の詰まった袋をゼキアの手から奪い取ると、ルアスはルカには聞こえぬように囁く。咄嗟に返す言葉が見つからず声を詰まらせると、その隙にルアスはさっさと玄関の扉に手をかけていた。
「じゃあ、行ってきます」
「気を付けてねー」
 無情にも、ゼキアが声をかける間もなくルアスの姿は遠ざかっていった。全くもって有り難くない方向に気を使ってくれたものである。呑気に手を振るルカを横目に、ゼキアは耐えきれずに深い溜め息を吐いた。
「そんなに露骨に溜め息吐かなくてもいいじゃない」
「……吐きたくもなるっての」
 悲しげな顔をするルカだったが、声音が非常にわざとらしい。一時とはいえまた二人でいなければならないのかと思うと、頭痛がしてきそうだ。彼女も好かれていないのを解っていながら居座るのだから、本当に理解に苦しむというものである。
 渋々ながら、ゼキアは昼食の準備に台所へ籠ることにした。テーブルに残っていた野菜類を抱え、無言で背を向ける……が、ルカがそう簡単に解放してくれる筈もなかった。


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