TF-short | ナノ
 


*SSSSです。




the reason?





カツンカツンと聞こえてくる音に、雪菜は顔をあげる。
自分よりはるか上空、けれども雪菜と同じように地べたに座っていたトランスフォーマー、クロスヘアーズはグラスを宙にあげた。

「ゴーグルの調子悪いの?」
『いいや、良すぎるぐらい良い』

そう言いながら太陽の光をゴーグルごしに見上げるクロスヘアーズを眺め、雪菜は彼の膝のもう一段高い方へとよじ登る。
途中で、be careful、とクロスヘアーズが呟くのと同時に、雪菜が落ちそうになった片足を片手で支えてくれるあたり、カメラアイでは捉えずとも雪菜の気配を察知しているのだろう。
その慣れた様子に、雪菜もまた特に気に止めることもなく、いつもの定位置へと座り込んだ。

「そのゴーグルって、何が見えるの?」
『何でも。サイバトロンでぶっちぎりのハイテク機能を搭載してるんだぜ』
「例えば?」
『……言ってもお前には分からんだろう』

くつ、と何がおかしかったのか、クロスヘアーズの口角が持ち上がる。
相変わらずこの図体野でかい緑の巨人の笑いのツボはわからない、と雪菜はふと彼のブルーのカメラアイを見つめながら口を開いた。

「クロスヘアーズ、目悪いの?」
『……』
「あ、図星?」
『別に見えなくても敵は殺れる』
「そんな物騒な例えしなくても」

じゃあこの文字は?と指で数字の1を作れば、不満そうなクロスヘアーズの排気が全身に振りかかる。
さすがに分かるか、と笑いながら雪菜は片手で髪の毛を撫で付けながら、こちらを見下ろしていたクロスヘアーズのカメラアイと視線を合わせた。

「そのゴーグルは眼鏡も兼ねてるの?でもあんまりつけてるの見た事ないなぁ」
『そりゃ、別にここでは困ってないからな』

コツン、と大きな指が、雪菜の頭をつつく。
だいぶ手加減してくれているのだろう、その柔らかな重みに、雪菜はふふ、と笑みを零した。

『あぁ、でも』
「ん?」

ふと、何か思いついたかのように、クロスヘアーズがもぞりと動く。
それに思わずバランスを崩しそうになった雪菜は、またしても背後から伸びてきたクロスヘアーズの手によって支えられ……そのまま”いつものように”持ち上げられるのかと思えば、今回は代わりに彼の金属パーツで出来た顔がズイと近付いて来た。

『ここまで近づかねぇと、お嬢チャンの顔は見えないかもな?』

ニィ、と口角を上げながら淡いブルーのカメラアイが、一瞬だけ濃い色を浮かべ、雪菜の視線と絡み合う。
そしてそっと睫毛を伏せた雪菜に、クロスヘアーズは唇を頬全体に当てながら、小さく呟いた。

『That’s y I don’t wear?』





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たまたま手に入れたTF4コミックに、クロスヘアーズはゴーグル無しはあまり見かけない、という設定を見つけたので滾った。
しかし、ゴーグルかけてるクロスヘアーズさんの方が珍しい気も、もごもご。

2014/9/2修正<ゴーグルを目に付けてる、ではなく、所持してるという意味では確かにゴーグル無しのお姿は見たことがない…そういうことだったのね、納得。