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Types and Meaning





ぺらり、と本のページを一枚めくりながら、雪菜はソファへと深く座り直す。
そしてチラと視界に飛び込んできた男の後頭部を見下ろして、静かに口元をあげた。

「何だ?」
「やだ、見てるのばれた?」

サウンドウェーブじゃないんだから、と雪菜がクスクスと静かに笑えば、今の今まで視線を落としていた男――メガトロンは雪菜の方へと顔をあげた。
いつもならば、どこから調達してきたのか、きちっとしたスーツを身につけている彼が今着ているのは、ジーンズにTシャツ。
完全にオフの日な彼が怪訝そうな紅眼でこちらを見返したのに、雪菜は笑みを零しながら軽く首を横に振ってみせた。

「なんでもない。それより、そんなところで何を読んでるの?」
「虫ケラの書いた本だ」
「……私の聞き方が間違ってました」

少し開いた窓から心地良い風が吹き込んでくる一等席にあるソファに腰を下ろしているのは雪菜。
そして、そのソファの肘掛を背にしながらフローリングに足を投げ出して本を読んでいるのはメガトロン。
誰がどう見ても、座る位置が逆なのはこの際、"長い付き合いの二人だから"という言葉で片付けるとして(それでも、レノックス辺りは腰を抜かすだろうが)、雪菜はため息混じりにらメガトロンの後頭部をそっと撫でた。

「内容は?」
「悪くはない」
「へぇ、珍しい。何て本なの?それ」

てっきり悪態吐く返事が返ってくるのかと思えば……あのメガトロンが、まさかこんな反応を返すなんて。
一体このちっぽけな地球のどこの誰の作品が、破壊大帝のお眼鏡にかなったのか。
そんな湧き出た興味に、雪菜がメガトロンの手元を覗き込もうとしてーー……

「……なんで隠すの?」

ひょいと覗き込もうとした視界が不意に暗闇に遮られた。
勿論、頬全体に感じる暖かく、そして鼻に届く大好きな匂いに、遮った正体がメガトロンの手の平だという事には直ぐに合点がいく。
けれども、このタイミングで目隠しをされる意味だけには考えが及ばずに、雪菜は不満に口を尖らせた。

「まぁ待て。焦らずとも教えてやる」

そして相変わらず遮られた視界とは別に、何やら愉しそうなメガトロンの声色が不意打ちのように耳元に届く。
思わずぴくりと身体が震えたのにはあえて気がつかないフリをしながら、雪菜はそのまま彼の手に自分の手を重ねた。

「え?何?教えるって?」
「そうだな、まずは……」

そう言いながら、今度はメガトロンの大きな手の平がぱっと頬から離れる。
明るくなった視界に瞬きを数回行っている最中、そのまま雪菜の手首を掴んだメガトロンは、徐に雪菜の手の甲に自身の唇を押し付けた。

「敬愛」
「、へ?」

一見すれば、まるで何処かの上流階級の挨拶のように落とされた口づけ。
けれども、滅多に無いその行為に雪菜が完全に抜けた声をあげれば、メガトロンの瞳が愉快気に細められた。

「これは、欲望。これは……賞賛」

言葉を続けながら、器用にメガトロンの唇が雪菜の手首から指先へと滑って行く。
ワザとらしくリップノイズを響かせながら続くそれに、雪菜がカっと熱をもった頬に気付きながら手を引っ込めようとするがーー勿論、そんな事を彼が許すわけも無い。

「ちょ、や、な、なにして、」
「虫ケラはキスの場所に意味を持つらしいな」
「な、に言っ、」

ここが、メガトロンと同じくフローリングだったのならば、まだ背後への逃げ場はある。
けれども、背中にしっかりと感じるソファの背もたれに加え、いつの間にか、両サイドに手を着いてこちらを取り囲まれては……雪菜に逃げ場等ない。

「え、っ、」

せめてもの防御とばかりに、雪菜が足を抱えたのがまずかった。
完全に墓穴を掘ったなんて気付く訳もなく、メガトロンが更に口の端を意味深く持ち上げた事い背中にヒヤとした感覚が走ったのも束の間――……

「お前にならー…」

そう言葉を紡ぎながら、メガトロンの形の良い唇が雪菜の脛に触れる。
ビクリと跳ねた足は、しっかりと彼に抑えられていては凶器になんてなる訳も無く、メガトロンは"上紅目"に雪菜を見つめながら、もう一度そこに唇を落とした。

「……服従してやってもいい」
「な、なに言って……お、思っても無い癖に!」

あぁ、この姿をディセプティコンの誰かが見たら……否、軍に居る誰が見ても腰を抜かすに違いない。
あのメガトロンが、人間の脛に唇を落とすなんて――サウンドウェーブあたりならば、発狂するに違いない……なんて過った考えを早々に頭の隅に追いやりながら、雪菜はワナワナと震える口を開いた。

「何を言う、本心だ」

悲鳴に近い声色で漏れた雪菜の抗議も、まるで見越していた様にメガトロンはクツクツと低い笑みを漏らすだけ。
何度も脛に唇を落とし続けながら、更にはツ、と指先でふくらはぎを撫で上げはじめさえしたメガトロンに、雪菜は僅かな逃げ場のソファの背後へと身体をずらした。

「あぁ、そうだったな。お前はこっちの方が好みだったか」
「な、」

人間の言葉をインストールして、人間の言葉をメガトロンが話している筈なのに。
メガトロンの言葉の意味が全く分からないまま、ある種自制を懇願するような瞳でメガトロンを見れば、彼は雪菜の太股をぐっと大きく左右へと開いた。
そして勿論……内太股に降ってくるのは、彼の熱い唇。

「……っ、ちょ!メガトロ、ンッ!」
「そんなに良い声で鳴くとはな。全く、物好きめが」

さわ、と太股に流れた彼の毛先がくすぐったいとか、触れられた内太股が熱く痛いだとか。
完全に思考回路をショートさせた雪菜が何か、と縋るように視線を彷徨わせて飛び込んできたそれは……メガトロンがつい先程まで読んで居たであろう本。
"TYPES OF KISSES, MEANING OF KISSES"(キスの種類と意味)、なんていうひどく俗物的タイトルのそれに……雪菜は目を文字通り、大きく見開いた。

「な、ちょ、あっ、」

一瞬気が他へと移っていたのをまるで咎めるように、更に熱い痛みが内太股に落とされると同時に思考が引き戻される。
ぞくぞくとした背中に走る感情を内心叱咤しながらメガトロンを睨み降ろせば、彼は口元に綺麗なカーブを描きながらゆっくりと身体を上げて――打ち太股を撫でながら雪菜の耳に言葉を落とした。

「支配と……誘惑」

ほんの一時前までは静かに本を読んでいた筈なのに。
今更ながらに、メガトロンに声をかけた自分を後悔しながらも……ようやく”正しい位置”に振ってきたキスに、雪菜は白旗を上げる様にゆっくりと瞳を閉じた。





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メガ様何やってんすか(ズゴン
バリ兄でもよかったんです、こう、絶対に脛にキスなんてやりそうにないキャラに、やって欲しかったんです\(^o^)/
安定の自己満。事故満。
memoにあげたSSの長いverでした。

ちなみに、ちょっとネットでうろうろしてると、日本でよく見るキスの意味とは違った意味での種類verが海外では出回ってるようですね。
そちらもロマンチックで素敵でした、はふ。
そちらはいつか、機会があればバリ兄で……!