![]() Untitled 感情のこもっていない瞳が4つ。 その瞳に、雪菜は深く頭を下げた。 「今までお世話になりました。」 「あっちでも、くれぐれも上手くやるんだぞ。せっかく無理を言って受け入れてもらうんだから。」 「また、迷惑だけはかけないで頂戴ね。」 瞳と同様に冷たくかけられる言葉に、雪菜は再び重たく頷いた。 そのまま視線を合わす事も無く、自分が今まで暮らしていた家を見上げて、小さな溜息を漏らす。 もう二度と来る事のない場所なのに、何一つ感情はわいてこない。 「タクシーを待たせるんじゃない。」 「はい。…ありがとうございました。」 もう一度だけ形だけ礼をし、雪菜は小さなボストンバッグをを引きずりながら、タクシーに乗り込んだ。 完全にタクシーの自動ドアが閉まる前に、バタン、と大きな音を立てて家のドアが閉まる音が耳に響く。 「お客さん、駅まででよかったですか?」 「はい、お願いします。」 それに気を止める事もせず、雪菜はミラー越しにこちらを見つめている運転手に指示を出した。 車の発進と供に次第に窓の外に流れて行く景色が速くなって行くのをぼんやりと眺めながら、##名前1##は目にかかる前髪を掻き分ける。 幼い頃の記憶は、ない。 どんなに記憶をたぐり寄せても、ふとした所でプツリと切れてしまう。 自分がどこから来たのかも、どこを目指していたのかも、何もかもが闇の中。 気付けば、孤児院に入れられており、珍しく、少しだけ違う色をしている左右の瞳が気に入られ里親へと引き取られた。 その後、里親は離婚、再婚と重なるうちに、##名前1##は邪魔者として扱われるようになり、引き取った事を後悔するように、恨み言を吐かれ、更には新しくできた”妹”までもが雪菜の存在を異質として扱う。 よくできたドラマの話だ、と心の中で自嘲を漏らした。 いろいろと積み重なるそれに疲れ、いっそ、消えてしまおうと思い、思いつきで手首に手をかけたのが先週末。 未遂として取り押さえられたのが最後、心配の”し”の字もかけられる事なく、精神病だ、これだから孤児は、と散々文句を言われ、挙げ句には、数日のうちに孤児院へと”返還”されることになった。 「どちらに向かわれるんですか?」 「さぁ。」 運転手の問いかけに、##名前1##はぽつりと呟いた。 バックミラー越しに、少し奇異な者を見るようなその視線をシャットアウトするように、雪菜は瞳を閉じる。 自分はいったい、どこへたどり着くのだろうか。 本当の親は、何処で何をしているのであろうか。 まだ、治りきっていないその手首をぎゅっと握り閉めた、その瞬間。 「うわぁぁあああっ!」 「っ!?」 運転手の叫び声に慌てて目を開けるや否や、大型のタンクローリーが目の横を過ぎ。 大きな振動が体を襲い、そして間もなく、雪菜の体に強い痛みと衝撃が突き抜けた。 あぁ、自分は死ぬんだ、と途切れる意識の中で雪菜は小さく微笑んだ。 * 時刻は、同じぐらいだろうか。 とある一室で、その場に居合わせた一同が呆気にとられて一点を見つめている。 ある者は自分の脇に手を瞬時に動かす。 「なっ、んだぁ!?」 「待てっ!」 突如目の前に落ちてきた人物と、物体。 ざわっと騒ぎだし次々と響く金属音と同時に、中心に居た男がそれを静止する。 「なんか…、間者にしては、無様だねぇ。」 緊張が漂う中、緊張感のない暢気な男の声と、箸を置く音が響いた。 すくっと、立ち上がると、今しがた目の前に”落ちてきた”人物へと足を進める。 「うーん、頭打ったのかな。」 意識なく、そこに倒れている人物の腕を手に取り。 そして、鎖骨に見える傷、見慣れない服装の下から投げ出されたその太ももの傷に、男はぴくりと眉を潜めた。 「雪菜、ちゃん?」 **** や、って…しまいまし、た。ごめんなせい!(土下座) 何か、とんでもないものを書き始めた気がしてなりませ、ん…げふっ。 史実捏造です、ごめんなさい、ごめんなs…(エンドレス >>back |