HP | ナノ
 


同僚としてオリキャラがでてきます。
航(ワタル)と読みます。







Nobody but u.





「お前、最近やつれた?」

ざわざわと騒がしい中、目の前でビールジョッキに手をかけながら航が口を開いた。
案の定、雪菜の仕事の終わりの目処がついたのは予想通りの10時を少し過ぎた頃。
お腹が減った、とヨロヨロとした足取りでエレベーターに乗った時に偶然出会った同期の彼に誘われるがままに居酒屋に流れ込んで暫くが経った。

「仕事が忙しいからねー昼ご飯も食べてられないぐらいに」
「うわ、そりゃ勘弁してもらいてぇな」

ぐいっと一気にビールジョッキの半分近くまでビールを流し込んだ航をぼんやりと見つめながら、雪菜は目の前の枝豆を手にとった。
10年以上も何だかんだで一緒にいれば、自ずと分かってしまう事も増えてくる。
例えばーー、と。

「それで?何かお話でもあったの?」
「やっぱ……わかっちまうか、お前には」

明らかに飲み始めの頃からソワソワとしていた様子を見ると、おそらく何か伝えたい事があるのだろう。
前回は彼女の誕生日プレゼントの話題だったか、と少し前の記憶を遡りながら雪菜はくすりと笑みに目配せをしながら航を見返した。

「俺さ、来月入籍する事にしたんだ」
「え、そうなの?」
「あぁ、式はまだ未定だけどさ」
「そっか、彼女さんと長かったもんね。おめでとう」

素直に口から出た言葉はこれで何度目の祝福だろうかと思う程に言い慣れた台詞になってしまった。
ホグワーツを卒業したのも、会社に入社したのも。
つい昨日のように思い返せるのに……気付けばもう13年も経ってしまったなんて。
同時期に入社をした同期も殆ど結婚してしまった、と雪菜は苦笑を浮かべながらビールに口をつけた。

「お前は?結婚しねーの?てか、彼氏いたっけ?」
「彼氏は……イギリスにいるよ」
「え、そうなのか?」

びし、と少し酔ったように赤い目を座らせながらマイク代わりに差し出された焼き鳥。
航に比べるとまだクリアな頭を緩く回転させながら、雪菜はそれを彼の手から抜き取った。

「随分会ってないけどね。……まぁ、いつか彼が迎えにきてくれるのを待ってるのよ」
「何だよそれ……え、いつから会ってないんだ?」
「卒業してからだから――……もう13年かな」

別に今更隠すものでもないが、そういえば、航とはこんな話をした事も無かったか、と過ぎて行った年月に寂しい笑みを浮かべたまま焼き鳥を口に入れた。

「お前、それって、」

いつの間にまともに話が聞けるようになっていたのだろうか、チラと見返したそこには先程までの酔っぱらっていた彼は居ない。
代わりに、少し言い難そうにこちらを見て居たいるその視線から逃げるように、雪菜は残りの串を口にいれた。

「ま、私の事は気にしないでさ。式の日取り決まったら教えてね」





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Is he still in love w/ me?


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