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Just as you are. * New enemy?






「珍しいね、シリウスがついてくるなんて」

図書館で、いつものお気に入りの場所に座りながら笑う雪菜に、笑みを返したい所だが今はそうもいかない。
複雑そうに顔を歪めたまま、向かいに座る訳でもなく、雪菜の隣に腰をかけてぐい、とその身体を引き寄せた。

「ど、したの?」
「……誰?」
「え?」
「さっきの、誰?」

課題がある、と図書館に行こうとした彼女の後について行くのは久し振りかもしれない。
いつもならジェームズと悪戯をしたり、チェスをしたり、たまに罰則を受けてたり、そもそもどうにも堅苦しい空気が好かず、にあまり一緒に行く機会の無い図書館に今日は何となくついてきてみたのはいいが。
図書館に入るとそこには、マダム・ピンスの姿は無く、代わりに自分達よりも少し年上に見える青年が雪菜と親しげに会話を交わした。

「シアンさんの事?」
「誰だ、それ」
「司書さん見習いだよ?」

撫で撫で、と腕の中から手を伸ばして自分の頭に手を翳す雪菜に、シリウスはそれでもむすっとした表情を消す事は無く雪菜の肩口に顔を落とした。
ぎゅ、と抱きしめた彼女は少しだけミートパイの香りがするし、チョコレートの匂いなんかもする。いつの間に食べたんだ。

「シアンさんは恋人だっているんだから、ふふふー、もしかして、焼きもち妬いちゃった?」
「ていうか何でそんな事知ってんだよ」
「それは教えられなーい。企業秘密です」

ね、と悪戯な音色でシリウスの頭をきゅっと抱きしめて、嬉しそうに笑う彼女には、強ばっていた口元の力をゆっくりと抜けていってしまう。
勿論彼女が浮気だの何だのしてるなんて、微塵にも思っていないけれど、好きなんだからほかの男と一緒に笑い合うのは見たくなんてない。
”妬いてなんてねぇよ”と意地で告げてみると、雪菜はくすくすと笑いながら、”それはそれで寂しい”なんて素直に口にしながらシリウスの頭を軽く持ち上げた。

「じゃあ、妬いて?」

お願い、なんて冗談めかして笑うその瞳に見つけた小さな彼女の本音に、シリウスは返事の代わりに唇を引き寄せた。




”次から俺も一緒に図書室行く”

”でもシアンさんは来週までしかいないよ、実習だから”

”……来週までは一緒に行く”



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