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Just as you are * Boring class ;(





退屈な授業、早々に羽ペンを机の上に投げ出して、シリウスは頬杖をついた。
隣のジェームズは悪戯でも思いついたのか、物凄い速さで羽ペンを動かしているが顔は一度たりともあげやしない。

そのままぼんやりと斜め前に座っていた雪菜を観察していると、ふと彼女の手元に小さな羊皮紙の切れ端が投げ込まれた――彼女の親友、アリスからだ。
カサ、とそれを開いた彼女は、きょろきょろと周りを見渡してから羽ペンで何かを素早く記入している。
授業中には良く見られるその行為に、何を書いているのかとシリウスが考えを巡らせていると、今度は自分の手元に何かが飛び込んできた。

「?」

見つめていた雪菜が振り返った形跡はない、きょろ、と一度だけ飛び込んできた方向へと視線を向けると、レイブンクローの女子生徒がヒラヒラと手を振った。
半年程一緒の授業をとっているが、名前すら覚えていない、そもそも自己紹介をした覚えが無い。
手元の羊皮紙をぴらりと片手で開くと、”放課後デートしない?”と何ともダイレクトなお誘い文句が並んでいた。

ウゲ、と顔を顰めてしまったのは見たくも無いリップマークがついていたから。

こんなものをセクシーだなんて思う男が世の中にいるのか、と呆れながらシリウスは溜息を漏らした。
再び羽ペンを手に取るのも面倒だったが、丁寧にその文字の上に”Never and Ever."(ゼッテーヤダ)と書いて手紙を丸めて返した。

背後から息を呑む声が聞こえてきたが、相手をするつもりはシリウスには毛頭ない。
そんな事より途切れた観察に、シリウスはついでに羽ペンを滑らせた自分の羊皮紙の隅っこをちぎって、斜め前の彼女に投げた。
驚いて身体をぴくりと強張らせた彼女は、シリウスからの手紙だと気付くとそっと教科書に隠してそれを開く。
暫くして、雪菜の羽ペンがやけに長く動いてるのをぼんやりと見つめながら、こそり、と後ろに伸ばした雪菜の手から羊皮紙を抜き取って――ふ、と笑みを漏らした。




”何の手紙だったんだ?”

”恋話だからシリウスには秘密〜、だけど、私はシリウスと幸せそうでいいねって褒められちゃったよ ;) やったね!”








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