<<読む前の注意>> *マフィアパロです *擬人化です *雪菜嬢のボディーガードがジャズです *全て、ただのノリです とあるマフィア事情 シャっとカーテンが開かれる音がヤケに耳に響き、雪菜は眉間に皺を寄せた。 まだ身体も思考もとろりとした睡眠を味わっていたというのに、一気にそこから引き戻される感覚。 それに抵抗を示す様にタオルケットを頭の上まで被ろうとして――ギシ、と僅かにベッドが傾いた。 「Good morning,my lady」 「ん……じゃ、ず?」 「携帯に何度連絡をいれても起きねーから、勝手に入ってきた。もう昼過ぎだぞ」 「だ、って……」 むにゃ、とゆっくりとしか動かない口元をタオルケットから出して重たい瞳をそっと開く。 開ききらない瞼をなんとか雪菜が押し上げてみると、そこにはグレーのスーツ姿の男の姿。 雪菜の枕の位置より少しだけ下に腰を下ろした彼、ジャズを視線だけで見上げながら、雪菜は不満そうに口を尖らせた。 「今日は……何も予定ないって……昨日ジャズが言ってたんじゃない……」 「悪いな、明け方にちょっとそうは言ってられなくなっちまってな。取りあえず、O.P.のとこに向かう」 そう告げたジャズの、黒いグローブをした指先が雪菜の頬に当てられた。 少しだけひんやりとしたその感触と、鼻をくすぐる皮の香り。 むに、とやんわりと雪菜の頬を摘んだジャズの申し訳なさそうな笑いを見上げて、雪菜はタオルケットの中に溜息を零した。 「……どうして、私ばっかり狙われるの……」 「雪菜、」 「もう嫌、いつもいつも逃げてばっかり……」 「どうした、今日はヤケにぐずるな?」 不満を漏らした雪菜に、ジャズの瞳が少しだけ細くなる。 その問う視線を暫く見つめてから、雪菜は気怠さを訴える身体を何とか起き上がらせた。 「グズってなんかない。ただ……」 「ただ?」 「私だって、戦えるのに。銃ぐらい撃ってみせるわよ」 吐き捨てるように呟いてから、雪菜はチラとジャズへと視線を送った。 きっちりとグレーのスーツを着込み、そして少し首もとから見えるのはブラックのシャツ。 そしてトレードマークらしいバイザーは今は髪の上へと挙げられているジャズのそれを目で追いかけてから、雪菜は自身の膝を引き寄せた。 「Old Megsが何よ、私だって……マフィアの端くれだもの」 「おいおい、物騒な事を言うもんじゃねぇぞ?それに、お前をこっちの世界に引きずり込まない様にあれだけ苦労しているO.P.の事も考えてやれ」 「そりゃ!……そりゃ、オプティマスが気にかけてくれてるのは有難い、けど……けど、もう、」 "普通の生活になんて戻れる訳ない"と小さく呟きながら、雪菜は完全に膝に顔を埋めた。 今からどれくらい前だろう、楽しい大学生活が突然銃声とともに壊れた。 人生で一度も関わった事がなかった、ディセプティコンというマフィアに何故か急に狙われる様になったのは。 そして、遠縁にあったオプティマスという、これまた良く分からないマフィアに匿われる様になったのは。 「雪菜、全てにケリをつけたら元の生活に戻れる。そうO.P.は約束しただろう?」 「…………」 そしてジャズという男が、自分のボディーガードとして紹介されたのはオプティマスに会った日の事。 それからというもの、ボディーガードなのか執事なのか分からない程に身の回りの世話をしてくれるジャズと顔を合わせない日はない。 最初は全くの未知の世界に全てが半信半疑だったのだが……実際に飛び交う銃弾を前に軽やかな身のこなしで自分を守ってくれ続けているジャズには、今の自身が置かれている状況を自覚せざるを得ない。 「分かってる、分かってるから」 「雪菜」 「ちゃんと覚えてる。オプティマスが私に約束してくれた事、覚えてる」 初めて会ったオプティマスの、酷く悲しそうな瞳は雪菜の脳裏に確かに焼き付いている。 嫌だ、と涙を零しながら元の生活に今すぐ戻りたいと訴える雪菜を見つめていた、あの深い哀しみを宿したブルーの瞳の色。 仮にもマフィアのボスでもある筈なのに、彼は酷く平和を愛する男だ。 「俺の話は覚えてるか?」 「自分の命に代えても守ってみせる、だっけ。オプティマスの前で言ってたわね」 "凄くキザっぽかった"と苦笑をしながら雪難はゆっくりと膝から顔をあげて、寝起きの髪を指先で軽く整えた。 少しばかり簡単に機嫌が崩れてしまったのはきっと寝起きのせいだろうし、こんなやり取りをジャズとするのは今に始まった訳でもない。 さて今日は何を着ようか、オプティマスに会うならばそれなりの格好しなくてはいけない、と雪菜は大きく身体を伸ばしてベッドから立ち上がった。 「何だ、忘れてるのか」 「え?」 「――泣いた分以上の幸せを、雪菜にくれてやるって言っただろう?」 つ、とベッドから離れようとした雪菜の身体の端、右腕がジャズによって後ろへと引かれる。 まだ続いていた言葉に、雪菜が怪訝に振り返ってみると、ベッドの端に相変わらず腰を書けたままのジャズは口元に笑みを浮かべながら雪菜の片腕をそのまま自身の口元へと引き上げた。 「……それも、キザっぽい」 「なぁ、雪菜」 手の甲にチュ、とリップノイズを立てて落とされたキスに、雪菜はトクンと鳴る胸を打ち消す様に自身の手を引き寄せた。 他の……特にディーノと違って、彼は女遊びなんてしない。 それは彼に惚れた女がいるから、そしてそれが誰なのかなんて……長い間時を供にしていれば雪菜の耳にも自然に聞こえてくる。 「今日のドレスは、ライトグレーだ」 「なんでジャズが決めるの」 「勿論、他の男に会う前で俺以外の色なんて身につけて欲しくねーからな」 背後に投げられる言葉に、雪菜は震えそうな唇を何とか噛み締めてクローゼットに手をかけた。 彼が、自分を好きだと直接告げられた事は一度も無い。 だけど、周りが、そして問わずとも彼の行動と発言を見ていれば、自惚れかもしれないが自ずと気付いてしまう――彼に想われているという事実に。 「何かいつもグレーのドレスを着てる気がする」 「それでいいじゃねぇか、お前によく似合う色だ」 いつの間に背後に来ていたのか、もう一度耳元に軽いリップノイズが響いた。 同時に、うなじに触れる温かい熱。 ぴくん、と跳ねた身体に満足そうに息を漏らしたジャズは、やがて雪菜の頭を二度程撫でてから部屋を後にした。 「……元の生活になんて、もう戻れる訳ないでしょ」 ぽつり、と呟いてジャズが今しがた触れたばかりのうなじを指で撫で付けること暫く。 元の生活に戻る事を何よりも求めているのに、求めていた筈なのに。 荒々しい毎日には酷く不似合いな、ふんわりとした熱を胸に感じながら、雪菜はクローゼットに手をかけた。 **** 某ディーノさんの誕生日→TFディーノに脳内リンク→マフィアっていいね→TFマフィアパロとかおもしろそう→ジャズのボディーガードっていいね というぶっ飛んだ事情から誕生しました^q^ >>back *** >>back |