:: 青峰君
放課後、いつもの屋上。
だるそうに昼寝をしていた大輝を見下ろしながら、雪菜は露骨に肩を落とした。
「大輝、部活は?」
「だりぃ」
「またさっちゃんが怒るよ?」
「怒らせとけばいーんだよ」
別にこのやりとりは今日が初めてではない。
むしろ、今更張り切って部活に行く彼を見る方が返って驚いてしまう、と雪菜は大輝の寝転ぶその姿に溜息を零した。
「雪菜、もうちっとこっち来い」
「嫌よ。どーせスカートの中見るんでしょ」
そういう事だけは年相応なんだから、と青空に呟けば不意に足下に衝撃が走る。
思わず閉じていた瞳を開けて落としてみれば、少し遠かった筈の大輝がしっかりと視界に飛び込んだ。
「なんだ、今日は黄色か」
「ちょっ、」
はっと雪菜がスカートを抑えれば、大輝から残念そうな舌打ちが聞こえてくる。
慌ててその場に屈み込むた、ぐんと近くなった大輝の顔が不機嫌そうに歪められた。
「気にくわねぇ」
「は?」
「青にしろよ、下着の色」
むすっとした表情の大輝に、雪菜が目を瞬かせる事暫く。
そういえば、事あるごとに青押ししてくる彼を思い出して……雪菜はくすりと笑みを漏らした。
「涼ちゃんみたいに、真面目に部活にでるようになったら青いの履いてあげる」
「んで黄瀬が出てくんだよ、そこで」
胸クソ悪ぃ、と呟いた大輝の瞳がギロリと雪菜を射抜く。
その”黒豹”のような鋭い瞳に射抜かれ、縮こまる人は後を絶たず。
けれども生憎と言っていいものか、雪菜はその瞳に表情を変えないまま、不機嫌そうな大輝の髪に手を伸ばした。
「バスケ、楽しくなくなっちゃったの?」
「……うっせ、黙ってろ」
「大輝のバスケしてるところ、見たいなー見たいなー。そしたら毎日青の下着つけたげるのになー?」
クスクスと笑いながら、硬い芯のあるその毛先を指でくすぐる。
相変わらず不機嫌そうに表情を歪めていた大輝は、やがて何を思いついたのか雪菜の手をぱしりと掴んだ。
「んじゃ、行くか」
「え?」
突然言葉を告げながらニィ、と至極楽しそうな笑みを打って変わって浮かべた大輝に、雪菜がパチパチと目を瞬く。
が、そんな雪菜の様子は完全にお構い無しといった様に、大輝は身体を大きく伸ばしながらその場に立ち上がった。
「下着屋。俺をその気にさせてくれんだろ?」
「へ?え?ちょ、ちょっと大輝?」
しっかりと繋がれた手は勿論解く事なんて出来やしない。
くぁっと欠伸をしながらだるそうに歩き出した大輝に引かれるがまま、慌てて後を追いかけながら……雪菜はポケットの中の携帯を取り出した。
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to さっちゃん
ごめんね、今日も大輝は部活行かないみたい(´・ω・`)
だけど、明日は絶対行くから安心して!