:: ディーノ妄想。
パラパラと雑誌を遊ぶ指の音。
時々楽しそうに頬を緩めて記事を見つめるその漆黒の瞳を見つめてどれぐらい経っただろうか。
「どうしたの?」
そう問われてようやく、ディーノは自身から漏れていた金属音に気がついた。
こんな初歩的な事、いつもなら意識せずに制御できるというのにーーあぁ、これは……"これ"が。
「……別に」
「そう?ならいいんだけど」
そしてまた視線を手元の本へと落とした彼女をカメラアイで追いかけ終わるとようやく、ディーノは静かに手で顔を覆った。
「Non esiste...」
"駒"はたくさん居る、彼女よりももっと容姿も端麗で自分好みの駒が。
なのに、どうしても目の前の彼女から目が離せない。
あぁ、この俺がこんな地味な女にーー人間如きにスパークを奪われたなんて……Non esiste!(ありえない)