きょ、今日こそ勇気を振り絞れ、俺!
深呼吸を一つついてから、すぅと息を吸い込む

「み、宮様っ!」

え・・ちょっとまって!
振り絞れっていったのは自分だけどこれはこれで力みすぎて声が少し裏がえった
2人という少ない人口密度の教室には俺の(裏がえった)声がよく響いた


ああ恥ずかしい
こういう時にだけ声が響くってなんか悲しくなる
普段なら大半クラスメイトの声にかき消されてしまい、先ほどよんだ名前の主に届く前に彼女は教室を出てしまう

だがしかし、今日は不運か幸福か、俺の声はしっかりと彼女にまで届いたようだ

「どうしたんじゃ島、そんなに大きな声を出して」

そう言って最初はきょとんとした顔から徐々にクスクスと声を漏らして年相応より少し無邪気な笑顔に変わる

かあああと顔に熱が集中したのがわかる
熱い 今、俺の顔は窓から差し込んでくる夕陽に負けないくらい赤いんじゃないんだろうか

「あ、いや、!その大した事、じゃないんですけど…。そのですね!えぇと」

“一緒に帰りませんか”
その一言が言えだせなくてもどかしい

「少し落ち着いたらどうじゃ?そんなに急ぐとも、妾は逃げたりせんぞ。それとも妾と2人で緊張しているのか!」

「っ!」

漫画ならボフンッと湯気をあげてるよ絶対
さっきよりも熱い
鼓動が早くて返事を返そうとして口がパクパクしている
声が出てないから端からみれば金魚みたいだろうな  
近くにいるのに何故か遠くから「なんてな!」と無邪気な声が聞こえる

わかってた…それを聞いても鼓動も顔に集まった熱もやむことはない

宮様は時々俺の気持ちを知ってか知らずか、思わせぶりな言葉を口にする
その言葉に毎度毎度少しの期待を抱いてしまう自分がいて
決してそうでないとわかっていても、今でも膨らんだ期待がまだ萎まない

「島!大丈夫か!?顔が赤いぞ!ままさか、島!お主熱でもあるんじゃないのか!」
「ち、違います!大丈夫ですから!(近いですよ宮様!)」

ぐいぃと宮様が熱を計ろうと顔を近づける
正直嬉しいいが恥ずかしいんです
綺麗に整った鼻や眉、シャープな目に赤くてきれいな瞳 さらっとした紫色の髪が白い肌に良くはえる
そしてふっくらした可愛らしい唇

俺だって健全な高校生で、その唇に触れたいとは思うけどそれはそれで恐れ多くてできるはずもない
て言うかまだ付き合ってもない
の前に異性としての認識すらされていない


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