「いい風」


ガノンドロフ視点


夕方。

先生な俺が云うには黄昏時。

今日はとても蒸し暑かった反面、今開け放してある窓から入ってくる風は涼しい。

入り込んでくる風は談話室の中へ夜の風を運んでくる。

俺はソファーに座り直し、読書をしていた手を止め窓の外を見た。

夕陽が見えた。

ステージのオルディン大橋から見える夕陽に似ていた。

がちゃ

トゥーンリンク「がんもー?」

猫目の小僧が談話室に入ってきた。

ガノンドロフ「どうした?何か用か」

そう問うと、小僧はそのくりくりした猫目を俺へ向け、不思議そうに首を傾げる。

トゥーンリンク「珍しいー何時もどっかいけ!とか云うのに」

ガノンドロフ「…」

ぼすっと俺の隣に座る。

トゥーンリンク「ねぇ」

ガノンドロフ「なんだ」

トゥーンリンク「砂漠の風って…死を運ぶの?」

真面目な顔でそう聞いてきた。

ガノンドロフ「…何故俺が砂漠の民だと知っている?」

トゥーンリンク「俺の世界のがんもがそう云ってたの。「風が死を運んできた」って」

ガノンドロフ「…風か」

トゥーンリンク「ハイラルの風は死とは別のものを運んでくる」

小僧は続ける。

トゥーンリンク「ワシはこの風が欲しかったのかもしれぬ」

ガノンドロフ「そう俺が云ったのか」

トゥーンリンク「うん」

俺は窓の外を見た。

日が沈んでいた。さらに涼しい風が吹き込んできた。

ガノンドロフ「ハイラルの風は…穏やかだった」

窓の外を見ながら呟く。

トゥーンリンク「?」

ガノンドロフ「砂漠は。砂漠の風は昼はとても暑く夜はとても冷たかった」

砂漠を思い出す。

トゥーンリンク「…」

ガノンドロフ「確かに、俺はハイラルの風が欲しかったのかも知れない」

…かもではない、欲しかった。

だからハイラルを王から奪った。

欲しかったものを手に入れた、そう思った。

トゥーンリンク「今は?」

ガノンドロフ「封印された身なのでな…」

トゥーンリンク「ここの風は?」

ガノンドロフ「ここ?」

トゥーンリンク「スマブラ界の風。いい風だよね」

ガノンドロフ「…」

トゥーンリンク「ね?」

ガノンドロフ「ああ…いい風だ」

そう云うと、満足したようでソファーからぴょんっと降りて俺の手を引っ張った。

トゥーンリンク「ごはんだよ!」

ガノンドロフ「もしかしてお前それを云いに来たのか?」

トゥーンリンク「うん!肩車してー!食堂までごー!」

ガノンドロフ「…仕方ないな」

と、小僧を肩車する俺は本当に大魔王なのかと自分で疑ってしまった。

トゥーンリンク「やったーたかーい!」

ガノンドロフ「じっとしてろ…」

開けっ放しの窓から吹き込んでくる風は「いい風」だった。




08.8.13

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