大魔王と妖精
ガノンドロフ視点
中庭を歩いている時の事。
俺は木に寄りかかって寝ている大きい小僧を見付けた。
警戒心などまるで無しで寝ている。
その顔はまだ幼さが残る。
…こんなガキに俺は封印されたのか。
そんな事を考えていると妖精が小僧の帽子から出てきた。
ナビィ<何ガノンドロフ?>
小僧と違って妖精は少し警戒している。
当然だが。
ガノンドロフ「いや、この小僧に俺は敗けたんだな、と思ってな…」
俺は続ける。
ガノンドロフ「まだ子どもではないか。それにコイツの態度といい、15歳という歳にも疑問を感じずにはいられん。まだ10にも満たないような…」
妖精は少し警戒を解いたようだ。
ナビィ<それはそうだヨ。リンクは8才だもん>
ガノンドロフ「…?だが現に小僧は…」
ナビィ<リンクがマスターソードを台座から引き抜いた時、すぐにアナタを倒しに行かなかったデショ?>
ガノンドロフ「確かに。7年の空白があるな」
疑問は確かにあった。
ナビィ<8才じゃマスターソードを使うには小さすぎたんだヨ。7年の眠りをえてアナタを倒しに行った。だからこのリンクは7年間がすっぽり抜けてるの>
なるほど。
ガノンドロフ「だから小僧は中身はガキなのか」
ナビィ<そうだネ。まだコリンの方が大人だネ!>
ガノンドロフ「あっちの小僧はどことなく大人びてるな。見た目に反して」
俺は小さい小僧を思い出す。
ナビィ<そうだネ…少し口が悪いみたい。よく喋るみたいだし>
しかしこの小僧はよく寝ているな。近くでこんなに会話していて起きないのか?
…試してみるか?
こんなに眠りこけている勇者など簡単に殺せる。
ピリッ…とその場の空気が緊張した。
ナビィ<…>
妖精も俺の殺気を感じたようだ。
途端、小僧が目を開いた。その碧眼は少し虚ろだ。
…ほう、流石は勇者だな。
俺は殺気をおさえる。
小僧の目は再び閉じられた。
俺はその場を立ち去る。
ほっとしていた妖精が立ち去る俺に気付いた。
ナビィ<?ガノンドロフどこ行くの?>
俺は振り向かず答えた。
ガノンドロフ「部屋に戻る。面白い話を聞かせてもらった。少し疑問に思っていたことが解消された。感謝する」
ナビィ<ぁえ!?エェ…それはよかったネ…?>
随分驚いているようだ。語尾が疑問になっている。
俺が立ち去ったあと。
リンク「んー…ゔー」
ナビィ<あ、リンク起きたんだネ…>
リンク「ん…」
ナビィ<……>
リンク「どうしたの?」
ナビィ<……さっきガノンドロフがね────>
俺は部屋に戻りルアーをつくる。
部屋から見える中庭で、妖精と小僧が話しているのが見えた。
ハイラルにはなかった穏やかな時間。
ここの時間も、悪くない。
08.4.25
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