::真夜中の白い影::


視点なし


日が落ちる少し前。

ここは後ろから聴こえた「きゃあ!」という悲鳴に小さく反応した。

「なんだぁここちゃんか…」

振り向くとクリスチーヌの安堵したような姿。

何事かとクリスチーヌに歩み寄る。それもそのはず、ここはあみを持ってヒグラシを探していただけ。悲鳴をあげられる様なことはしていない。

ごめんね、と謝りクリスチーヌは語り出す。

「最近ね、夜中にオノを持って村を走り回る人がいるんだって!てっきりそれかと思っちゃって」

ここは首を傾げた。

「まんたろうが云ってたの!遠くからだったから顔とかよく見えなかったけど、その人…上から下まで真っ白だったんだって!きっとオバケだよ!」

こわーい!と肩を震え上がらせたクリスチーヌはここを見てはっと固まった。

現在のここの服装。

髪の毛はギラギラしてる色、つまり白。服はうさぎなふく。

先程クリスチーヌが云った「オバケ」の条件に当てはまる。

間。

後クリスチーヌが、

「……なーんてまさかねぇー!」

と笑いながらふざけてバシッ!とここの背中を叩いた。その衝撃でここはべしゃっと地面に伏してしまった。

叩いた衝撃?否。

「(そ、そんな風に思われてたなんて…)」

起き上がりながらここは思う。

「(夜中にオノ持って走り回ってたの私です、だなんて云えない…!)」

実は「オバケ」は甲虫捕獲ついでに環境整備していたここさんだったのである。

微妙にショックを受けたようだ。

その日を境に、「真夜中の白い影」は現れなくなったとか。




09.9.3

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