唐突に投げ込まれるフィギュア。途端、足元から光り始め、全体を包む。
フィギュアが光を払うように腕を振る。すると現れたのは赤い帽子とオーバーオールが特徴的な、お兄さん…とは云い難いおじさん。
彼の前に同じく置かれたフィギュアも、ピンクの球体となって動き出す。彼らはファイター。今日も、集まる観客を楽しませる。

戦え。戦え。
誰かがそう急かす。
じり、とにじり寄ると対戦相手は相変わらず能天気に体を傾けた。
全く、牽制もくそもあったもんじゃない。
「まだ寝ぼけてるのかカービィ」
「眠くないよ!おなかは空いてるけど!」
その返答に安心し、俺は地面を蹴った。

ああ、こんな時間だ。今日も見ないと!
慌てて鏡を覗き込む。既に乱闘は始まっていた。
赤い帽子の配管工、マリオ。
ピンクのまるい体のカービィ。
この二人はスタジアムにいるファイターの中でも一二を争う人気だ。フィールドの隅には彼らに次いで人気のピーチ姫とゼルダ姫が観戦している。
あ、勝負がついた。

どぼん、と水の中に放り込まれたような。どんどん重く沈んでいくような。でもいやじゃない、ゆらゆらと気持ちいい。
光が遠くなっていく。暗闇に吸い込まれていく。
ああ、ぼくは眠るんだ。
そう思った時、突然引っ張られ急にまぶしさに襲われた。
「俺の勝ちだな!」
「?」
周りを見回す。
あっスタジアム。そうだったぼくマリオに負けたんだ…
「むうー」
また負けちゃった。
「ほれ、いつまで座ってんの」
出された手を掴むとぐいと引っ張り立たせてくれた。
「次は負けないからね!」
「ああ!」


110628

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