「ねえ…」
ことり。
YOUが瑠璃の前に飲み物を置き、コップを見詰めたまま瑠璃へ声をかけました。コップから湯気が立ち上ります。滅多に口を開かない彼が話し掛けたことに瑠璃は少しだけ目を見開きました。
「なんだ」
「……」
何も云わないYOUに苛つくこともなく、瑠璃は彼の言葉を待ちます。彼にとって言葉を発することはかなりの労力を使う行動ということを瑠璃は知っていたからです。
「瑠璃はなんで真珠を守るの」
瑠璃ははぁ?と溜め息混じりに声を吐き出しました。
「そんなの、決まってるだろう」
前に云わなかったか、とYOUに瑠璃は云いました。
「仲間だから?」
「そうだ」
「それだけなの?」
質問に対してか、珍しくよく喋る彼に対してか、瑠璃はす、と目を細めました。
「どういう意味だ」
顔をあげたYOUは不思議そうな顔をしていました。
「だって、真珠は「姫」でしょ?「姫」なのに瑠璃の怪我を治すことは出来ないよ」
質問の意味を理解した瑠璃がYOUに掴みかかろうとしましたが、YOUの顔を見てその手を引っ込めました。
「足手まといじゃない…なら一人でいた方が狙われないと思うんだけど」
彼に悪気はなく、純粋に疑問に思って訊いていたようです。
瑠璃は思いました。
「(こいつ、たまにこういうとこあるんだよな)」
何か、感情の一部が欠落しているような気がする、彼がそう思ったのは実は一度や二度ではないのです。
「大事な人だから?」
ですが、次に飛んできた質問に瑠璃は吹き出し、口を付けていたコップを落としました。彼の考えていたことは瑠璃の予想とは掠りもしない全く違う場所を通り過ぎて行ったようです。
「な、に…云って…!」
咳き込みながらやっとそう云った瑠璃にYOUはタオルを渡しました。
「ちゃんと拭いてね…」
「……チッ」
舌打ちをして引ったくるようにタオルを奪い取ると、瑠璃は少し頬を赤く染めながら溢したコップの中身を拭きました。
「…なんで赤くなってるの」
「なってねぇよ」
「そ」
瑠璃の横の席についたYOUは本を開き読み始めました。
「(意外だな…こいつも人のことに興味があったんだな)」
「羨ましいな」
YOUがぽつりと呟きました。
「?何をだよ」
「俺には家族とか、居ないから。守りたい人って、どういう人なんだろうって」
ああ、そういう意味か…と瑠璃は安堵し、深く息を吐きました。
「どうしたの」
「いや、」
やっぱりこいつ意味わかんねぇ奴だな。そう心の中で瑠璃は思いました。




10.12.24
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