「エレ、歌って」
鳥カゴ灯台に久々に来た客人はエレをマイホームまで連れ出しそう云いました。
「え…?」
エレは少し困った顔をしました。
客人、YOUはカニを膝に乗せ、座り込みました。
「……」
「どうして…?」
エレがそう訊ねると、訳を話していなかったことに気付いたYOUがあ、と小さく声を発しました。
「フラメシュが、最近エレが歌ってないって」
「……」
露骨に沈んだ様子の彼女を見て、YOUは黙っていましたが、静かに口を開きました。
「最近…鳥カゴ灯台の近くを船が通ってるよね」
彼女が頷いたのを確認するとYOUは続けます。
「まだ怖い?」
「…怖い?」
彼女は首を振りました。
「怖いんじゃないわ。卑怯なだけ…」
「俺は」
カニを持ち上げながらYOUは云いました。
「エレの歌が聞きたいんだよ」
にこ、と笑ったYOUにエレもつられてか笑みを溢しました。
「…それじゃ、聞かせてあげる。特別よ」
その日、美しい歌声がマイホームに響きました。




10.12.24
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