魔法都市にエメロードという学生がいました。そして、彼女を愛する一人の人間がいました。
彼女は云いました。
「私は珠魅だから、この核が壊れない限り老いることも朽ちることもないわ。」
珠魅は朽ちることのない種族です。それでも人間はエメロードを、珠魅を愛していました。
「大丈夫、僕は人間だけど老いることも朽ちることもない。」
彼女は人間が何を云っているのかわかりませんでした。


宝石店にいた瑠璃とYOUの前にヌヌザックが現れました。珍しく慌てているようです。
「おや、いらっしゃいませ」
店主のアレックスへの挨拶もそこそこに、ヌヌザックは二人に訊きました。
「お主らエメロードを見なかったか?」
「……。」
「いや、見てないが?」
瑠璃は答え、YOUは首を横に振りました。
「ここにも来ていませんね。」
瑠璃が顔を向けたためアレックスも答えます。
「いつから居ないんだ?」
「一昨日からじゃ…授業にも出ておらんのじゃ。」
ヌヌザックの言葉に瑠璃が固まり、アレックスも目を細めました。YOUだけは特に変わりませんでした。
「まさか宝石泥棒か…!?」
「予告状は来ていない。」
うろたえる瑠璃をYOUが即座に否定しました。
「…そうだな…決め付けるのは早い。取り敢えず探してみよう。」
瑠璃の提案にヌヌザックが頷きます。
「時期が時期じゃ。魔法都市から出ているということはないじゃろう。」
「私も、もしエメロードさんがいらしたらお知らせします。」
頼んだぞ、と云いヌヌザックが消え、続けて瑠璃とYOUが宝石店から出ました。
アレックスがお気を付けて、と頭を下げました。
「手分けして探すぞ。俺は学校の方、YOUはフルーツパーラーの方を頼む。」
YOUが頷いて、二人は別れました。


走るYOUとすれ違う一人の人間がいました。
「……?」
一瞬、血のにおいがしました。
YOUが足を止め、振り向きます。
人間が背中を丸めるようにゆっくりと歩いて行くのが見えます。
YOUは少し迷いましたが、すぐ気のせいと思い直し再び走り出しました。
人間の手には、大切そうにエメラルドが握られていました。


人が入らない森の中、人間は一人佇んでいました。
「これでいい。これで…ずっと一緒にいられる。」
人間は、静かに涙を流しながら云いました。
「愛してるよ、エメロード。」
そして、動くものはいなくなりました。




10.6.13
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