君という色彩を見た
「おい、お前！」
「……なんだ」
「こんな周りになーんも無いところのベンチに子供が一人で隣に座ったら、『どうしたの？ママとはぐれたの？』って聞くだろ、普通」
「あ……？」
「なあ。お前の“カルデアのマスター”は？一緒じゃないの？」
「！」
「怖。殺気やめろよな。俺は今、ただの子供なんだから」
「……あの時のガキが、オレに何の用だ」
「別に？さっきも言った通り、俺は今ただの子供だからな。お前をどうこうしにきたわけじゃない。お前の気配があったからさ、久しぶりに様子を見にきてやったってのに。あのどうしようもないマスターはどこ？」
「……いねえよ。オレ一人だ」
「はあ？なんで？折角聖杯あげたのに。使わなかったの？」
「は？」
「は？」
「なんの話だ」
「だから、聖杯だよ。俺が消える前に、お前のマスターの体に埋め込んでやっただろ？」
「……」
「あれ？俺アイツに言わなかったか？」
「……」
「何黙り込んでんだよ。あーあ、勿体ねえ。折角くれてやったのに。なんも願わなかったのかよ」
「……いや」
「あ？」
「オレはあの時、聖杯への願いを口にした」
「なんだよ、しっかり使ってんじゃん。なんてお願いしたんだ？」
「誰がテメェに言うか」
「ま。あの場所でのアンタらのこと見てたから、大体分かるけどな。お前、どうせマスターの願いを叶えるためにでも使ったんだろ？だったら、尚のことなんでお前一人なんだよ」
「……さあな。この話は終いだ。さっさと何処かへ行け」
「チッ、つまんねえの。あのどうしようもないマスターの面を拝みに来たのに。いないならしゃーない。じゃあな〜」
「待て」
「あ？行けって言ったり待てって言ったりなんだよ」
「お前の名前」
「！」
「今度は、あるんだろう？聞いてやる。名乗っていけ」
「……お前、顔と態度に似合わずそういうとこあんのな」
「うるせえよ」
「はは、マスターが変ならその英霊も変わってんな！」
「名乗る気がねえのならさっさと失せろ」
「……もしさ。お前が、お前のマスターにまた会えたら。俺からのごめんとありがとうを、伝えてくれよ」
「ああ。仕方ねえ。覚えておいてやる」
「へへ、じゃあな！俺の、名前は――」