・一月に発行した小説本の再録となります。(誤字訂正有) ・文庫サイズ291pぐらい(約11万字)の長さの話です。 ・◇→視点変更 ・カバーイラスト、挿し絵はキツラ様(@kitsurice)より。本当にありがとうございました。 →一番上のタイトルからはカバーイラスト、各ページ本文中リンク(青文字になっています)からは挿し絵に飛べます。 ・本文、及びカバー/挿し絵の転載等はご遠慮ください。 (Please do not redistribute without my permission.) ・何が起きても大丈夫な方向けです。 ※閲覧はスマホ推奨です。PCだと画像が大きいかも ▼ Chapter:00 ▼ Chapter:01 Actuality ▼ Chapter:02 Nightmare ▼ Chapter:03 Similarity ▼ Chapter:04 Wish ▼ Chapter:4.5 ▼ Chapter:05 Engagement ▼ Epilogue Resonance あとがき 緋の中で舞い散る、時の歯車。 全部、思い出した。今更、遅すぎたのかもしれないが。 どうやらあいつ≠ヘ、記憶を届けに来てくれたらしい。 夕暮れの空を仰ぐ。 どこまでも終わりのない、永遠の眠りへと向かっている、自分と同じ姿をした何か≠ェ思い出を破壊していく、そんな世界。 街の外へ出る事は叶わなかった。歩いては行けるものの、いつの間にか、街の中央へと戻されている。 けれど、目を閉じて脳裏に風景を思い浮かべると、次の瞬間にはその場所へと移動していた。 トリスタ、ヘイムダル、ガレリア要塞――記憶になる場所なら、どこへでも行けた。なんともまあ不思議なモンだ。 ただ、自分を模した何か≠ェ破壊行為をしていくたびに、突き刺すような頭痛がして一瞬視界が揺らぐ。 そこで直感した。このまま奴を放っておけば、この世界で自分はやがて消滅する事になると。 悪夢に閉ざされた世界の中で再び目を閉じてしまえば、今度こそ、目覚める事のない眠りへと連れて行かれてしまうのだと。 それでも妙な事に、あの影に抵抗する気にならなかった。 上手く逃げ回ってはいたが、それでは意味がない。破壊されてゆくだけだ。 そう分かっていても、何かしらの得物を召喚して応戦しようとしなかった。 このまま、死を望んでいるのか。 それは不明瞭になりつつあった。自分自身でも、明確に判断する事が出来ない。 五回も巻き戻された世界。五回も、時を旅したリィン。 本人の意思なのか、それとも別の何かが起こしたものに巻き込まれているのかは定かでないが、何故そんな事になってしまったのか。深く考えずとも、なんだか分かってしまう気がした。 そんなのは勝手な考えだと、冷静にもう一人の自分は言うが、考えられる原因はそれくらいなのだ。 仮にそうだとして――それならば、どうするべきか。 何と応じてやるべきか。 いつか終わる世界の中、故郷の墓地の近くで寝転び空を仰ぐ。 心の奥に眠っているであろうこたえ≠ヨと、ただひたすらに手を伸ばしながら。 ←back |