06
「……上谷、なんでそんなエロい顔してんの?」
「してなッ……!」
「俺のキス、気持ちよかった?」
先輩が、うれしそうな顔で私の首筋に顔を埋めた。
「や、だ! 先輩、やだ……あっ!」
先輩の、私の腕を掴んでいた手が、胸に降ってきて、痛いくらいの強さで揉まれる。いやだ、と思うのに、身体は勝手に反応して、先輩の手に素直に落ちていく。
仁さんとは違う、少し乱暴な手つき。仁さんとは違う唇の温度。感じないようにそう意識すればするほど、紐がほどけるように芯がほどけてしまう。
「おねが、先輩ッ、あっ、あ、やだ!」
先輩の手が下肢に伸びてきて、快感と恐怖で体の力が抜けた。ずるずると、ロッカーを背に腰が抜けて座り込んだ私を追って、先輩もしゃがみこむ。そして、ぐいっと足を開かされた。
先輩の指がショーツ越しにそこに押し付けられて、濡れていると自覚した瞬間、堤防が決壊した。
「ひ、うぇ、やだぁ、ひっ、く」
「……かみ、や?」
「やだ、やだ、仁さん、仁さん……」
「……」
先輩の指が止まって、ゆっくりと離れていく。覆いかぶさっていた体が引いて、私は無意識に自分を守るように丸まった。
なんで、仁さんじゃないのに、私の身体はこんなふうに反応してしまうの。なんで、優しいはずの篠宮先輩がこんなことするの。なんで、仁さんは私に優しく触れるのにつらいの?
「っく、ふぅ、じん、さん……!」
「……」
「仁さん……」
「……」
先輩の手が伸びてきて、戸惑うように髪の毛に触れた。大げさなくらい、混乱と恐怖で体が跳ねて、先輩の手が引っ込んでいった。
「うっ、え、仁さ、仁さん……!」
「……ックソ!」
ガンッと鈍い音が響き渡った。そろそろと顔を上げると、先輩の拳がロッカーにめり込む勢いで突きつけられていた。そのまま、先輩がうなだれて呟く。
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